困難を有する若者自身の「社会的スキル」認識と教育諸施設におけるスキル学習実践のあり方(教育困難高校、アメリカ・青少年育成組織など)との関連について、これまで実施してきた聞き取りや観察、アンケート等のデータの総合的分析と整理の作業を行い、報告書(『困難を有する若者の支援を問いかける』5部構成、386ページ)にまとめた。 主な作業を紹介すると、①教育困難高校の在校生およびNPO援助実践の参加者らが、これまで受けてきた広義のスキル学習をどのように受容し認識・評価しているのかをまとめた(困難を有する若者とソーシャルスキル)。②教育困難高校の卒業生がこれまで高校や専門学校などで受けてきたスキル学習をどのように受容し、職場等でいかに評価しているのかをまとめた(卒業生フリーター研究)。③進路多様校・定時制高校等を中退した者がその後の社会生活でスキル学習をどのように必要とし評価しているのかをまとめた(高校中退研究)。④アメリカ・ティーンコート調査を含む、各種NPOによる支援施設等でのスキル学習のねらいと実際をまとめた(矯正施設・支援実践研究)。⑤これら調査を実践する上で方法的に留意してきた点や新たな知見として書き留めておきたいことをまとめた(調査方法その他)。 以上のポイントを簡略に示せば、①心理主義的視点からのスキル学習が当事者にとって効用感の限界があり、個人のコミュニケーション能力への不安が残存しがちであること。②困難高校卒業生などでは、上記の能力不安が具体的なビジネススキルとして一層顕在化しやすいこと。③NPO等によるディベートを含んだ参加型の実践により、スキル認識の変化がみられること、などを指摘できる。 このように、実際の現場を意識して、個人化された対人能力のイメージを変容させる実践を進めることが必要であると結論付けた。
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