研究課題/領域番号 |
23531136
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
江原 裕美 帝京大学, 外国語学部, 教授 (40232970)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 開発援助 / 教育文化交流 / ラテンアメリカ / アメリカ / 教育開発 |
研究概要 |
平成23年度はアイゼンハワー政権における開発途上国への援助の進展について整理分析することを目標とした。 研究実施計画に基づき、国際関係、対外援助政策の特徴、ラテンアメリカに対する援助政策の変遷を中心に明らかにした。当時、朝鮮戦争後の緊張に続き、50年代中盤のソ連による「平和攻勢」と途上国への援助増加が見られた。アイゼンハワー政権はこれに対応し、トルーマン政権の技術援助政策を受け継ぎつつも、援助機構の再編、臨時的と見られていた経済援助を恒久化した。金額の推移としては、50年代前半は軍事援助の急増が見られ、政権第二期以降次第に経済援助が増加するという経過を辿る。その特徴は援助の全体性、すなわち多様な種類を含む援助体制全体として冷戦の勝利と言う一つの目的に向かうものであり、共産主義への脅威に応じて金額が決定された。 ラテンアメリカは共産主義の脅威は少ないと見られ、経済軍事援助共に金額は非常に少なく、技術援助が中心だった。しかし、ラテンアメリカ諸国は経済発展のための援助を求めていたのであり、大戦後の経済悪化に苦しむなか反米感情は高まった。1958年には親善訪問中のニクソンが襲撃される事件が発生、これをきっかけにアメリカの対ラテンアメリカ援助政策は大きく変わっていく。 本研究はその推移と意味を歴史的資料に基づき明らかにするものである。ラテンアメリカはアメリカが国際的な進出を果たす上での足場となってきた。本研究は、戦後アメリカが国際開発において果たした役割を特定地域との関係において具体的に分析することにより、第二次大戦後に出現した国際開発の起源、その思想の展開など、今日的な重要テーマを明らかにするための一歩として意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画として、「1950年代後半のアイゼンハワー政権における援助政策の変化と背景思想」を設定した。1950年代は援助機構の再編が頻発し、冷戦の深化、ラテンアメリカとの関係の変化など多くの要因が変化しているため、その見取り図を明らかにするだけでも非常な困難がある。本年はこの時代に関する論文を3本、続く時代についての論文を1本完成させ、予定した一定の進展は見られた。それらにより技術援助についてある程度の情報をまとめることが出来、1950年代は、社会開発や教育開発援助の本格的な展開に至る前段階であることが明らかになった。重要な点は、アメリカの経済援助(技術援助)政策が対ラテンアメリカ政策と密接に関係していること、またアメリカの開発援助政策の転換がラテンアメリカ政策にはっきり現れていることを明らかにしたことである。その過程で、細かい数値的な情報などについては、得ることが難しかった面もある。ただし、複雑な援助機構のしくみからいって、また、援助関係の数値の算出枠組みからみて、それが難しいことは周知されており、その中での最大限の努力は行ったと思っており、一定の見取り図を描くことが出来たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、「1960年代初期ケネディ政権における対ラテンアメリカ援助政策と教育協力:進歩のための同盟と開発観」をテーマとする。 アイゼンハワー政権時の開発思想の転換を受け、ラテンアメリカに対してどのような開発援助政策をケネディ政権が目指したのか、政権担当者らの言動や研究者らの報告などから探っていく。同時に「進歩のための同盟」とは一体何だったのか、具体的にどのようなプロセスをたどったのか、また技術援助の流れを受けた社会開発という概念が導入される中で教育はどのように扱われたのかを探り、当時の開発思想の真髄とはどのようなものか、その醸成にラテンアメリカとの関係はどんな役割を果たしたのかを分析していく。あたらなければならない資料は多岐にわたり、その読み込みに全力を挙げる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の中核的な部分にさしかかるため、資料の確保と読み込み、海外調査による重要資料の入手が平成24年度の目標である。平成23年度は新たな高性能のコンピューターを入手し、電子データの閲覧における能率が向上した。本年はそれを活用して作業を一層進めたい。特に日本で入手できるアメリカ議会の資料と国務省の資料の読み込みが中心となる予定である。 なお、平成23年度は、高齢の両親の世話の問題が生じ、海外調査を行わなかった。平成24年度は、両親の健康状況を勘案しつつ、可能な範囲でアメリカでの調査を行いたいと希望している。前年度分の研究費を併せて利用することで、滞在期間を出来るだけ長めにとり、所在の手がかりがつかめてきた必要な資料の入手を、なんとか実現したいと考えている。そこで得た資料も読み込み作業に重要となる。使用計画としては、前年度分と併せた研究費のうち、海外調査におおむねその60%程度を用い、残りは、該当年代の古書の入手、個人の伝記的な資料等多様な資料の入手、および一定の量がそろった時点での資料整理に用いたい。
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