2014年度にはこれまでの研究の補足として、ケネディ政権下の対ラテンアメリカ教育政策の論点を明らかにすることと、ジョンソン政権時の開発援助政策と進歩のための同盟の推移を分析することを目標とした。ジョンソン大統領は教育畑出身の大統領として「偉大な社会」の実現を望んでいたことから、進歩のための同盟政策がどのように変化したかが注目される。 2014年度中の成果としては1962年3月にチリのサンチアゴで開かれたユネスコの地域教育会議、いわゆる「サンチアゴ会議」におけるアメリカとキューバの教育政策をめぐる論争を分析し、近代化論に基づく教育政策とキューバ革命政権の社会主義的政策との対立点を明らかにした。 また、ジョンソン政権における進歩のための同盟への関与を時系列的に追いその政策と成果を明らかにした。ジョンソンがケネディ以上に対ラテンアメリカ援助で実績を残しながらも、ベトナム戦争の時代背景もあり、強烈に焼き付いた若い前大統領のイメージが強い「進歩のための同盟」を、強力に盛り上げるにはいたらなかった。さらに政権後期、ラテンアメリカ内部の共産主義勢力に対する認識の変化とともに、「同盟」のアメリカにとっての重要性は大きく変わっていくことになる。 以上二つの研究成果から、ジョンソン政権の開発援助をめぐる対ラテンアメリカ政策の推移とその背景を明らかにすることができたと考えられる。この次の段階として、対ラテンアメリカ教育施策の具体的変化、また当時議会で承認されながら予算配分を得られなかった「国際教育法」に見られる考え方との関連性、といった課題を追究していきたい。
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