女性の職業キャリアに関する先行研究は結婚・出産後の就業形態や未婚期の就業形態と結婚との関係が注目され、高学歴女性の離学後の職業キャリアについて十分に説明されてきたとはいえない。先行研究の課題に対して、本研究は女性の職業キャリアが分化する要因を母親の就業意識や子育てのあり方が与える影響を考慮することで説明することを目的とする。 本研究は幼稚園教諭・保育士を目指す中京圏の短期大学1・2年生と中京圏の短期大学・大学を卒業した20-50歳の女性を対象に高校卒業時の進路選択、ライフコース展望、家庭環境や母親の働き方、母親の就業意識などについて調査を行った。短大生を対象にした調査の結果、資格取得やカリキュラムに興味があること、早く就職したいと思う者が短大に多く進学していたことが明らかになった。前年短大生を対象に行ったインタビュー調査結果と同様、短大生は将来の職業を考えて進路を選択し、経済要因が短大進学に影響していることが示唆された。 将来展望は、結婚・出産後に一時退職し、子育て後に再就職を希望する者が最も多く、次いで結婚・出産後も就業継続を希望する者が多かった。この傾向は中学・高校時代と同様であるが、中学・高校時代と比較して就業継続希望者が減少し、再就職希望者が増加していた。再就職や退職を希望する者は家事に専念したいと思う割合が高く、就業継続希望者は低い結果であった。性別分業意識には否定的であるものの、家族のために家事に専念したいという意識が将来展望に影響を与えていると思われる。また、母親と同様のライフコースを希望する者が多く、母親がアドバイスする就業意識が女子学生の将来希望職業キャリアに強く影響を与えていた。 大卒女性を対象に行った調査結果では、大卒者は女子学生が希望するライフコースと同様の傾向であり、母親の就業意識が職業キャリアに影響を与えていることが明らかになった。
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