研究課題/領域番号 |
23531141
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
藤山 一郎 和歌山大学, 国際教育研究センター, 特任准教授 (70388106)
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キーワード | 国際協力 / サービス・ラーニング / 高等教育 / 開発教育 / タイ / インドネシア / 援助 |
研究概要 |
2年目となる本研究では、以下の2点にわたり研究を推進した。 第1は、近年の大学が海外体験学習を含めた国際交流を積極的に推進する社会的背景を明確にする作業をおこなった。大学の国際交流促進の要因を、国際的な社会環境および国内の社会環境、求められる人材(育成)像の内容、具体的な政策や施策の4つの分析視点から、1990年代の「国際人」および2010年代の「グローバル人材」の2つの人材像を分析した。その結果、新たな人材像への模索は社会的な危機感が共有される時に登場している。90年代の「国際人」は国内社会の多様化とバブル崩壊後の経済停滞に対応する人材であり、2010年代の「グローバル人材」は日本型システムの制度疲労が明確になり、新興諸国の台頭と競争力の低下という不安感・危機感が共有されるなかで登場した人材像であった。しかしながら、両人材像のイメージはともに、基本的には「日本人としてのアイデンティティをもちながら異文化を理解し協調することが可能、かつ外国語で意思疎通をおこなえる」で共通しており、むしろ社会背景、産官学間関係が変化する中で、国際交流の手段・手法の多様化が進展してきたことが判明した。なお、この本研究については、紀要論文としてまとめた。 第2は、海外体験学習における実践研究である。平成23年度に実施したタイの海外体験学習による参加学生の効果検証である。これは渡航前および渡航後のアンケート結果に基づく。参加学生に対して渡航目的や到達目標を確認する事前アンケートを実施した。その結果、海外体験学習によって、直接的な自己充足から自己の客体化、日本の相対化、ならびに社会との関係性の「気づき」を得るものとなり、いわゆる「グローバル人材育成」に効果を与えうるものとの一定の見解を得た。なお、本研究については、本務校の紀要にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目においては、実践研究としてタイをフィールドとした海外体験学習(サービス・ラーニング)を実施し参加者の教育効果を検証できたこと、また、海外体験学習を促進する社会的背景を明らかにすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策としては、最終年度として主として以下の3点とする。 第1は、サービス・ラーニングに対する受け入れ側インパクトの検証である。今年度ではインドネシアで国際協力活動を実施している学生団体の活動地において、現地ニーズおよび成果に関する予備的な聞き取り調査を実施したが、最終年度ではインドネシアおよびタイで実施したサービス・ラーニングの検証をおこなう。 第2は、国際協力分野における高等教育機関の役割および現状の課題を整理する。 第3は、上記の考察を経て、研究課題である国際協力と高等教育機関によるサービス・ラーニングの循環的な質的向上に向けた考察と総括をおこなう。以上の結果について、紀要論文等に投稿することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に引き続き、インドネシア現地調査・実践研究を2回実施する予定である。 使用計画は以下のとおり。①海外現地調査経費:約60万円(次年度研究費の2分の1に相当)、②研究補助業務謝金:約15万円(海外現地調査時の補助)、③図書文献資料購入:約20万円、④消耗品費:約10万円、⑤成果印刷:約15万円
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