最終年度である本年度には、学校臨床社会学的研究を応用演劇によって進めることで達成されうる地平について、本研究における実践に関する社会学的分析をふまえ、理論化作業を行ない、論文にまとめるとともにその成果をさらにふまえ、年度末に学会でワークショップ形式の成果発表を実施した。 具体的には、教育実践としての応用演劇(フォーラムシアター)の構造および機能に関する理論的定式化とワークショップにおける経験的研究を行った。公開済みの成果としては、論文「教育実践としてのフォーラムシアターにおける参加と接続:物語性、“未完”性、身体性、共同性」(『龍谷大学論集』第484号〔2014:7-19〕掲載)、世田谷パブリックシアターで実施したワークショップ(『学びの現場から~SPTワークショップラボ2014-2015』)および日本教育保健学会で実施したワークショップ(「わたしの問題、あなたの問題、それが問題:フォーラムシアターで考えよう」)があげられる。これらの成果において明らかにされたことは、いずれも、考えるべき問題を抱えているが解決しないままでいる人、気づかないまま問題の当事者でいるなどの人々が、応用演劇的実践を通じて問題と向き合う主体、研究主体となる機会、方法として応用演劇的アプローチが有効な手立てとなりうるということである。そしてそれは、学校臨床社会学研究におけるアポリアの一つと考えられる、当事者の研究実践からの疎外という問題への応答としても一定の意義を有することが、明らかになった。
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