研究課題/領域番号 |
23531143
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研究機関 | 中村学園大学 |
研究代表者 |
望田 研吾 中村学園大学, 教育学部, 教授 (70037050)
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キーワード | フリー・スクール / イギリス / スウェーデン / 教育改革 |
研究概要 |
平成24年度における研究は、以下のように実施した。 第1は、前年度に引き続き、連立政権によるフリー・スクール政策に関する文書及び労働党のフリー・スクール政策への態度に関する資料等の収集・分析を行った。 第2は、スウェーデン及びイギリスのフリー・スクール等の2回の訪問調査実施である。第1回調査では、イギリスのフリー・スクール政策のモデルとなったスウェーデンのフリー・スクールに対する訪問調査を実施した。期間は2012年11月2日から11月12日までの12日間である。この調査ではスウェーデンのフリー・スクール設立の中心となっている民間教育企業Internationella Engelska Skolan:IES及びKunskapasskolanが運営するフリー・スクール3校、教育研究省等への訪問調査を行った。 これらの調査によって主に以下の点が明らかとなった。(1)スウェーデンでは公立学校に比べてフリー・スクールへの父母の間での人気が高く、フリー・スクールが公立学校にとって脅威となる競争相手として発展していた。(2)IES、Kunskapasskolan両社とも海外への進出を図っており、特にイギリスでは連立政権のフリー・スクール推進策に沿ってイギリスでのフリー・スクール設立を進めており、イギリスにおけるこうしたスウェーデン民間教育企業のプレゼンスが高まっている状況が認められた。 第2回は、IESがイギリスに初めて設立したフリー・スクールへの訪問調査、フリー・スクール反対の主張を展開している教育ジャーナリストに対する面接調査などを実施した。調査期間は2013年3月17日から3月26日までの11日間である。この調査においては、上記フリー・スクールはイギリス政府のインビテーションにより設立されたことや同校がイギリスの学校に比べて規律面を重視した教育を行っていること等が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は以下のように設定されている。 「本研究は、2010年5月に成立したイギリスの保守党・自由民主党連立政権の教育改革の中核に位置づけられるフリー・スクール政策を対象として、フリー・スクール導入の背景、フリー・スクールをめぐる政治的論争、フリー・スクール設立を意図する親や教師のグループ・企業等の実態、フリー・スクールのタイプ、その教育実践の実態等に焦点を当てつつ、フリー・スクールの実相を解明することを通じて、アメリカのチャーター・スクールやスウェーデンのフリー・スクールをモデルとする民設公営型学校であるフリー・スクールがイギリスの学校制度にどのようなインパクトを与えるのか、また先進国における教育改善に対して、民設公営型学校がどのような有効性を持つのかについて、比較教育学的視点から明らかにすることを目的とする。」 この研究目的に沿って、24年年度においても、連立政権のフリー・スクール政策関連の文書等の収集・分析を計画通りに実施するとともに、労働党のフリー・スクール政策への態度等に関連する文献資料も収集した。 また、研究計画の中核を占めるのは現地訪問調査であるが、24年度には特にイギリスのフリー・スクール政策のモデルとなったスウェーデンにおけるフリー・スクール設立の主体となっている民間教育企業や教育研究省等の訪問調査を実施し、イギリスの政策の基となったスウェーデンのフリー・スクール政策とフリー・スクールの実態に関する有用な知見を得ることができた。 さらに、イギリスにおいて上記民間企業の一つが設立・運営しているフリー・スクール等への訪問調査を行うなど、本研究計画の中核を占める現地調査について、計画通り実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究については、以下のように実施を計画している。 1.前年度に引き続き、フリー・スクール関連、連立政権の政策関連、さらにフリー・スクールに対する一般の意識等に関連する文献・資料を収集・分析する。 2.2011年、2012年に設立されたフリー・スクールへの訪問調査:23年度、24年度に訪問したフリー・スクールへの再調査等を実施し、その後の発展、問題等について分析を行う。 3.研究成果を論文等において公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においても、前年度と同様、研究費の大部分はイギリス現地調査に使用する計画である。現地調査は平成25年11月を予定している。 平成23年度における研究費未使用額は約16万円であるが、既に平成24年度3月調査のための経費約6万円を支出しており、25年度研究計画のための直接経費80万円は、上記現地調査等に支出する予定である。
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