本研究の目的は、家庭科における授業記録をもとに、その読解過程や方略(読み・理解のための活動・思考、知識等)について調査・分析し、授業記録をもとに授業分析をする方法を検討・開発し、さらにその活用方法を検討することにある。 これまでの研究成果を踏まえ、昨年度、家庭科教育法を受講した学生たちに、授業の読解過程として、①映像記録を活用した省察、②文字記録を活用した省察、③観点別授業省察シートを活用した省察、④授業構造図の作成を通した省察の4つの方法を実施した。①の映像記録を活用した省察に関する学生の記述を整理したところ、教師の行動(方略・態度)や教材などに関する記述はみられたものの、教師の行動の意図や生徒の学習理解などについて言及する記述はみられなかった。②の文字記録を活用した省察では、①と同様の傾向にあった。③の観点別授業省察シートを活用した省察では、学生が授業の具体的な場面や発言に着目しており、授業を深く読み取り、具体的な省察ができることがわかった。④の構造図を用いた省察は、構造図の作成を通して、発問の吟味や活動の評価、生徒の学習理解などに着目しながら、授業の検討ができていた。また、個人で構造図を作成するだけでなく、グループで構造図を作成したり、個々人で作成した構造図を持ち寄ってグループでディスカッションすることが重要であることも確認できた。構造図は作成する時間は要するが、学生の授業読解のための基礎を築くためには重要なプロセスであると考える。以上のことから、学生たちが文字記録を活用して授業構造図を作成し、グループ等で授業分析をすることは、授業の再評価につながり、このような訓練を通して、よりよい授業を実践する能力を養うことができると考える。したがって、教員養成段階での指導の重要性を再認識した。
|