研究課題/領域番号 |
23531156
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島田 康行 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90206178)
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研究分担者 |
石塚 修 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10282287)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 小論文 / 高大接続 / 大学初年次教育 / 論理的文章 |
研究概要 |
本研究は、大学進学を目指す高校生は、文章表現をどのように学んで大学に入学するのか、大学に入学した初年次生は、文章表現にどのような問題を抱えているのか、この2点に大別される問題の考察を通して、高校・大学の双方で取り組むべき文章表現の指導の在り方について考えようとするものである。 この目的のために、平成23年度中には、教科「国語」の各科目の教科書が、論理的文章表現をどのように扱っているのか、全科目の全教科書についての調査を実施し、特に「小論文」単元の分布を明らかにし、教科書において論理的な文章表現学習のための学習材がどのように整えられているのかを整理・確認した。このことは大学生に対する文章表現指導の出発点を見定めるために大きな意義のある成果であったと考える。 また、副教材や模試・講座など、教科書以外に用いられる学習材については、その編集や出版を行う教育系出版社に対する聞き取り調査を実施し、その理念や方法、ビジョンなどをうかがい知ることができた。現在、その結果の公表に向けて準備中であるが、こうした調査結果の報告はこれまでに例がなく、高校における表現指導の背景について新たな知見を提供する成果になることが見込まれる。 さらに、大学生に求められる文章表現能力の育成を目指した取り組みにも一定の成果が得られている。すなわち、大学の授業において初年次生に作成させる論理的な文章をサンプルとして、段落構成、文の構造、語彙、文字表記などを観点とした分析を行う計画について、予備調査を行って観点の整理と統合を行うことができた。大学初年次生が抱える論理的文章表現の問題点を析出し、現在、大学生を対象として実施されている文章表現指導の効果や問題点を整理するための道筋が整いつつあると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画のとおり、教科「国語」の各科目の教科書が、論理的文章表現をどのように扱っているのか、全科目の全教科書についての調査を完了した。特に「小論文」単元の分布を明らかにし、教科書において論理的な文章表現学習のための学習材がどのように整えられているのか、整理・確認することができた。一方、副教材や模試・講座など、教科書以外に用いられる学習材については可能な限り広範に同様の調査を行うことを計画したが、予定の80%程度の達成状況であった。 また、大学の授業において初年次生に作成させる論理的な文章をサンプルとして、段落構成、文の構造、語彙、文字表記などを観点とした分析を行う計画については、本格的な調査分析の前段階として、試行調査による観点の整理を行ったに留まる。
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今後の研究の推進方策 |
高校生の文章表現学習の実態をより具体的に把握するために、複数の高校において、生徒が実際に論理的文章を書く学習を、どの程度の頻度、分量で行っているのか、年間を通した実態調査を実施する。現在、調査協力校を選定中であり、いくつかの高校からは内諾が得られている。本事業の申請前に実施した予備調査によると、高校「国語」において、自分の意見を述べる論理的な文章表現をほとんど経験しないまま大学に進む学生の少なからず存在することが示唆されている。その確認のための実態調査をある程度広範囲に継続的に実施する必要がある。 一方、大学生の文章表現能力の育成に関しては、大学初年次生を対象とした文章分析と意識調査を本格的に実施する。具体的には、昨年度中に実施した予備調査を踏まえ、申請者らが担当する大学の初年次生に作成させる論理的な文章をサンプルとして、段落構成、文の構造、語彙、文字表記などを観点とした本分析を行う。 また、大学初年次生が、自分の考えを述べる論理的文章表現にどのような意識をもっているか、アンケート調査を行う。これも前年度までに実施した予備調査を踏まえて、大学生の抱える文章表現上の問題意識について、さらにその詳細を明らかにしようとするものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
東北、関東、信越、近畿、九州地方の複数の高校における論理的文章の学習の実態を把握するために、調査協力校を訪問して、実態調査及び研究討議、教員に対する聞き取り調査などを実施する(震災などの影響で、昨年度中に実施できなかった部分を含む。その分に係る研究費は本年度以降に使用する予定である)。この調査のために旅費、謝金、またデータ分析に関する人件費などが必要となる。 教科書以外の副教材などにおける文章表現の扱いについても、前年度からの調査を推し進めるために、研究資料収集のための費用、情報収集のための旅費などの費用が必要である。 また、大学生を対象とした調査の実施のためには、調査用冊子・シートの作成費や、データ分析に関する人件費、謝金などの費用が発生する。 さらに、次年度中にまとめ得た成果については、随時、学会などで発表する予定であり、発表に関する旅費、印刷費などの費用も必要となる見込みである。なお、高校における国語教育や大学における初年次教育などの取り組みについては常に情報収集が必要となることは言うまでもなく、書籍などの文献、資料収集にかかる費用も必要となる。
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