研究課題/領域番号 |
23531156
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
島田 康行 筑波大学, 人文社会系, 教授 (90206178)
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研究分担者 |
石塚 修 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (10282287)
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キーワード | 小論文 / 大学初年次教育 / 論理的文章表現 |
研究概要 |
高校における受験対策としての「小論文」指導等についての事例研究の一環として、主に二つの調査研究を行った。 まず、教科「国語」の各科目の教科書が、論理的文章表現をどのように扱っているのか、全科目の全教科書について調査を行った。特に「小論文」単元の分布を明らかにすることを目的として、教科書に論理的文章表現学習のための学習材がどのように整えられているのかを整理・確認し、科目「国語表現」における特徴を明らかにした。次に、複数の高校において、生徒が実際に論理的文章を書く学習を、どの程度の頻度、分量で行っているのか、実態調査を実施した。具体的には、岐阜県内の公立高校と東京都内の私立高校を対象として、教員を対象とする聞き取り調査を実施した。なお、副教材や模試・講座など、教科書以外に用いられる学習材が「小論文」等の論理的文章表現をどのように扱っているのか、範囲を広げて調査を続け、各社の新教材等を収集・整理した。 もう一つの柱である大学初年次生を対象とした、実際の文章の分析と意識調査の一環として、大学の授業において初年次生に作成させる論理的な文章をサンプルとした、段落構成、文の構造、語彙、文字表記などを観点とした分析を行った。また、大学初年次生が、自分の考えを述べる論理的文章表現にどのような意識をもっているか、アンケート調査を行い分析した。 さらに、最終年度に向けて、各大学で行われている文章表現指導実践例のレビュー研究の準備として、日本国語教育学会、全国大学国語教育学会等の複数の学術機関誌に掲載された、大学における文章表現指導の実践例の報告を収集・整理を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、大学進学を目指す高校生は、文章表現をどのように学んで大学に入学するのか、大学に入学した初年次生は、文章表現にどのような問題を抱えているのか、という2点に大別される問題の考察を通して、高校・大学の双方で取り組むべき文章表現の指導の在り方について考えようとするものであり、高校生の論理的文章表現の学習における課題や問題点を明確にするとともに、それを踏まえて「高大接続」の一連のプロセス(「志望理由書」や「小論文」の執筆など)を活用した、論理的な文章表現の習熟を目指す指導法の開発を試みている。 これについて、まず、高校における受験対策の「小論文」指導について、聞き取り調査による事例研究を重ねたことで、大学進学を目指す高校生が取り組む「小論文」学習の問題点を析出・整理することに、ある程度成功していると考えられる。今後は、この調査を継続・拡大する必要があるだろう。 また、大学初年次生を対象として、実際の文章の分析と意識調査とを実施したことで、彼らが抱える論理的文章表現の問題点の析出・整理に一定の成果を上げることができたと考えられる。この調査も継続することで、より精度を上げていきたい。 最終的な目的は、高校生の論理的文章表現の学習における課題や問題点を明確にするとともに、それを踏まえて大学入試など「高大接続」の一連のプロセス(「志望理由書」や「小論文」の執筆など)を活用した、論理的な文章表現の習熟を目指す指導法を開発することであるが、その目的に向けて着実な成果が得られていると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、高校における、論理的文章を書く学習の頻度と分量に関する実態調査は、高校生が入学後、卒業までにどの程度の文章表現の機会を持つかを捕捉しようとするものであり、継続的な調査が不可欠となる。研究代表者と協力者が分担して、今後も継続して複数の高校の調査を継続する。また、調査対象校を拡大していくことも検討する。 次に、大学初年次生の、自分の考えを述べる論理的文章表現に関する意識調査については、これまでの調査項目の内容をブラッシュアップした上で、他大学の研究者にも協力を求め、できる限り広範にわたる調査として実施していく。 さらに、各大学で実施されている文章表現指導の効果や問題点の析出・整理については、学術機関誌における実践報告を継続的にサーベイしていくとともに、注目される実践例について、積極的に聞き取り調査等を追加していく。 以上を通じて、高校生の論理的文章表現の学習における課題や問題点を明確にするとともに、それを踏まえて「高大接続」の一連のプロセス(「志望理由書」や「小論文」の 執筆など)を活用した、論理的な文章表現の習熟を目指した具体的な指導法の開発を試みていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
この研究では、高校における論理的文章を書く学習の頻度と分量に関する実態調査、他大学の大学初年次生に対する意識調査や文章表現指導の実践研究調査など、現地を訪問して実施する調査の充実と拡充が重要である。調査対象の精選を含めて計画を検討した結果、14,817円を次年度使用予定としたが、これを併せて高校・大学の訪問調査をより実質的なものとしていく。 その他、研究最終年度における成果の発信として、全国規模の学会での発表や、学会誌への投稿、また、高校「国語」教員や大学の国語表現科目担当者などに宛てた成果レポートの発送などが必要となる。研究成果の積極的な発信を意識して研究費を使用する。
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