若者の職業意識の低下、フリーターの増加などの就業問題や、現在及び将来の職業生活に起こりうる問題に対して、その解決と予防教育を実践しているフランスの「予防・健康・環境」科のカリキュラムと教科書を分析した。 教科書Prevention Sante Environnement (Foucher 2010年)を分析した結果、「労働活動における職業的リスク」(モジュール8)、「労働災害および職業病に関する手続きと費用」(M9)、「化学的リスク」(M10)、「荷扱いと背中」(M10)、「筋骨格障」、「人間工学的アプローチ」(M11)、「労働災害の分析」(M12)、が職業生活教育に関する章であり、プログラム(学習指導要領)にあるモジュールと学習目標が示されている。 各章は、「状況分析」→「知識の動員」→「解決策の提案」の順で学習活動が示され、それぞれの学習活動で学ぶ複数の教材と文書やデータ、メモ、学習課題があげられている。それらは現在及び将来の職業生活に役立つ現実的な知識であるとともに、医学・薬学・化学・環境科学・人間工学・社会学・政治学・社会福祉学などの高度な専門的知識が中心である。現実の社会生活の状況分析といった帰納的な学習と、専門的な知識と理論を学んで批判的分析力の錬磨を目指す演繹的な学習を接続し、現実の生活場面で、高度な専門的知識を活用しながら問題解決を図り、リアルな理解を深めるという教育方法が採られている。また、そのような帰納と演繹を接続して繰り返す学習を進められるように、教育内容が系統性に編まれている。 結論として、プログラムには能力目標と態度目標、教育方法が具体的かつ構造的に示され、教科書はこのプログラムに忠実に編纂されており、予防の主導者を育成するという教育目的を確実に達成できるように系統づけられている点が、フランスの予防職業生活教育の大きな特徴である。
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