研究課題/領域番号 |
23531159
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
清水 誠 埼玉大学, 教育学部, 教授 (30292634)
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研究分担者 |
高垣 マユミ 実践女子大学, 生活科学部, 教授 (50350567)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 科学的な思考 / 探究的な学習活動 / 思考のスキル / 言語活動 |
研究概要 |
本研究は、小・中学校の学習指導要領で重視された科学的な思考力を児童生徒に育成するため、思考力を高める要件、思考のための枠組みや技能、必要な方略を明示した新たな実践的な教授・学習論と教授・学習方法を構築することを第一の目的としている。平成23年度は、これまでの思考力育成を目的とした研究の総括と児童生徒の思考様式を明らかにしながら科学的な思考力を育成する教授・学習方法の構築を行なった。 具体的には、ジョンソン-レアード(1983)によるメンタルモデルを始めとする思考に関する研究、科学的な思考力の育成に関わる国内外の先行研究、イギリスやカナダ等の科学的思考力を育成するための教育プログラムの総括を行った。これらをもとに、今日まで明確に示されてこなかった科学的な思考を合理的な思考と発散的思考に大きく2つに分類し、合理的な思考の中でも論理的思考の育成に焦点を当て、その育成のための教授・学習方法の構築を行った。教授方法としては、思考のスキルの育成と他者との議論を通しての自己内対話が有効であると考え、議論の際に役割を分散するという指導方法を試みた。これは、人間が思考をする際に多様な思考のスキル(批判的思考、推理、科学的探究のスキル等)を活用していることを児童生徒に分散し、習得させたうえで統合を図ろうとするものである。小学校6年生を対象に、考察時において小グループでの討論を行う際に一人ずつに役割を与えることが論理的思考力を高める効果があるかを検証した調査や、考察時に付箋紙を用いて討論することが論理的な思考力を高めることに効果があるかを検証した調査等からは、他者との交流の中での思考のスキルの育成は論理的思考力の育成に有効であることを明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の初年度である平成23年度は、これまでの研究の総括と児童生徒の思考様式を明らかにしながら科学的な思考力を育成する教授・学習方法の構築を行うことを目的として研究を進めることであった。具体的には、(1)認知心理学等で取り上げられてきた思考に関する研究や理科教育学の研究者達による科学的な思考力の育成に関わる国内外の先行研究、各国の科学的思考力を育成するための教育プログラムを総括し、併せて評価方法を確立する、(2)児童生徒がどのようにして科学的に思考を働かせながら問題を解決し科学的な概念を形成していくのか、その思考様式の把握と要件や働きは何かを明らかにする、(3)中教審答申で求められ言語活動を重視し、研究者と小中学校の教師と共に教授方法についての構築を行うことであった。 (1)及び(2)については、研究代表者である清水と研究分担者である高垣、研究協力者の小倉の3名で先行研究や科学的思考力の評価方法の整理を行うことができ、研究の目的が達成できたと言える。また、教授方法や評価方法の構築についても、小学校の教師7名、中学校の教師5名により検討を重ねてきた。その結果、6つの教育実践が実施でき、パフォーマンス評価も含めた教授方法や評価方法についての分析も進められており、初年度の目的は達成できたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、平成23年度の研究を引き継ぎ、特に下記のように研究を実施する。1.研究協力者とともに理論構築した授業を可能な限り数多く実践し、フィールドワーク、アクションリサーチ、参与観察等により収集したビデオカメラ等の記録をプロトコルや図に起こす。2.アンダーソン(1983)、チィら(1981)や小倉(1998)らの研究を参考に、科学的な思考を深めていく過程を分析する方法を確立し、その分析方法に基づき(1)で起こした記録の分析を行う。3.2の分析結果に基づき、研究者と小中学校の教師でプロジェクト会議を開きながら、科学的な思考力の育成を促す教授・学習方法の構築を図る。4.3で構築した教授・学習方法により検証授業を行い、その成果を明らかにする。5.研究を総括し、児童生徒が科学的な思考力を育成する教授・学習方法の最終的な構築と教師教育の適用を図るプログラムの作成を図る。 特に、最終年度の平成26年度は、小・中学校の教師を対象にした研修会・講演会の開催や教師・学生が活用可能な科学的な思考力の育成を促す授業DVDを作成・公開・提供を重点としていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、90万円(内訳として、研究代表者の清水が70万円。高垣が20万円)である。物品費は、737,000円を使用する。この内訳は、児童生徒の思考の様相を把握するための機器や消耗品等の整備とデータを処理するための機器や消耗品等に使用する。旅費は、128,000円を使用する。この内訳は、国内の関連する研究を行っている研究者との情報交換と資料の収集を行うために使用する。その他、35,000円を使用する。この内訳は、資料のコピーや送料等に使用する。
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