研究5年目は、これまでに構築した編集を概念装置とした学習指導モデルに基づき、研究会や拠点校で授業を開発し実践を完了させることができた。 まず、協力者である千葉県内の小学校国語研究部と連携して、編集活動の一つである書き換えを中心に実践研究を進め、文学的な分野12実践、説明的な分野6実践の計18実践を行った。これらの実践では、平成27年版国語教科書や全国学力学習状況調査、先行実践の書き換え学習を精査した上で、元テキストから新テキストを生成する書き換えによる意味の受容生成ルールを明確化する言語活動を実践した。 次に、研究拠点校の小学校では、創作という独自性を重視する学習を編集という発想で捉え直し、文学の創作学習を授業開発した。文学作品の元テキストを分析し、その内容や表現の特質を捉え、それらをメタ認知して学び、模倣や改変などによる編集活動によって新テキストを創作する学習指導を実践した。1~6年まで詩や俳句、短歌4実践、民話1実践、シリーズ4実践、物語7実践、伝記1実践、随筆1実践、影絵劇1実践の計19実践を開発した。編集という概念装置でこれまでとは異なる読み書き関連の工夫ができ、従来創作学習で課題であった文学表現の効果的な学習指導を実現することができた。 いずれの実践開発でも効果的な学習指導を成立させるには、編集活動の言語運用や情報処理のプロセスの特質を理解した上で、学習指導の目標や育成する能力を明確化し、言語活動の機能の種類や質、活動の規模や扱う情報量を調整して学習指導を具体化することの重要性が確認された。それらを実現するために、教師見本の作成を通して教師自らが実際に編集としての言語活動を体験する言語活動の教材研究が重要であることが確認された。 これらの授業実践の成果と編集を概念装置とした学習指導モデルやその考え方については、書籍として出版、発信されることになっている。
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