研究課題/領域番号 |
23531163
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
増田 金吾 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20134786)
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キーワード | 教育学 / 教員養成 / 師範学校 / 美術教育史 / 図画教育 |
研究概要 |
現代的教育課題に対処する時、教員養成の検討は重要となる。これまでの研究者(増田)の研究の積み重ねにより、こうしたことの検討を行う上で 明治後期から昭和戦前期の師範学校において、図画科教師で、図画教育家の赤津隆助の指導法に、多くのヒントが見出されると捉えた。本研究は、師範学校における赤津の研究を更に進めることにより、今日の教員養成において見直すべき点を明確化しようとしている。 交付申請書に記載した「研究実施計画」に基づきつつ、昨年度の実績を踏まえ、今年度(平成24年度)に実施した概要を以下に述べる。先ず、昨年度予定していた「赤津隆助の教育思想形成研究」を完了した。とりわけ、その内の「赤津に影響を与えた美術教育思想の調査」については、論文としてまとめた(別項「13. 研究発表(平成24年度の研究成果)」参照)。 次に、「師範教育と赤津隆助の教育思想との関連性の追究」の内「明治時代中期から昭和戦前期の師範学校のカリキュラム調査」については、昨年度に引き続き今年度も諸学を訪問して文献の実態調査を行った。訪問したのは、北海道教育大学札幌校、広島大学、福岡教育大学である。それらの附属図書館等を訪ねて文献収集を行った。また、これらの大学の各師範学校時代のカリキュラム(学科課程)に関する資料を収集・整理し、考察もある程度行った。これら直接収集した資料は、第一次資料であり、教員養成史研究、美術教育史研究として意義深い。 加えて、赤津の全体像を知るために、彼の出身地・福島県いわき市の図書館等において資料収集を行った。 なお、「赤津隆助が与えた教育的影響」に関する増田による美術教育家インタビューのテープ起こしに関わる整理を行った。美術教育者3名、倉田三郎、箕田源二郎、熊本高工についてである。これらの美術教育者はすべて物故者であり、直接話を聞いたものを文字化した資料は重要な意味を持つ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度(平成24年度)は、昨年度に比べ研究を進めることができた。しかし、達成度区分に記した「(2)おおむね順調に進展している。」の程度として、その内では低い方である。 その理由は、昨年度までの役職(附属学校運営参事)ほど管理職としての職務による影響はなかったものの、やはり本学での芸術・スポーツ科学系長としての役割は重く、その影響が研究に支障を来したためである。しかし、今年度は予定したエフォート35%を、25~30%程度にもって行けた。 管理職の職務や教育活動等と、研究活動との両立を目指し、来年度(最終年度)に臨むつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度(最終年度)は、「師範教育と赤津隆助の教育思想との関連性の追究」の内、①「明治時代後期から昭和戦前期の師範学校の学科課程調査」(若干、この部分のテーマを変更した)のまとめを行う。今まで訪問した大学で収集した資料を整理し、検討・考察することにより行う。 続いて、②「赤津の教育評価方法の調査」についてまとめる。赤津の関わっていた新図画教育会などで発表した文章や美術教育雑誌『学校美術』等の著書・雑誌などと、青山師範学校関係の文献と合わせて赤津の教育評価方法について調査することにより実施する。 そして、③「赤津隆助が与えた教育的影響」についてまとめる。赤津は、青山師範学校において多くの美術教育家やその他有為な人物を育てている。これは、本研究に着目した理由の一つであるが、こうした「結果」に教育の成果を見ることができよう。具体的には、美術教育については、武井勝雄、倉田三郎、箕田源二郎、熊本高工、等が挙げられる。これら4名についてまとめる。方法としては、文献調査と聞き取り調査のテープ起こししたもの等を整理・考察することによる。 最終的には、各項目(テーマとも言える)全体の整理をして考察を行い、まとめて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
前の文「今後の研究の推進方策」を受けて述べる。①「明治時代後期から昭和戦前期の師範学校の学科課程調査」、②「赤津の教育評価方法の調査」、③「赤津隆助が与えた教育的影響」は、最終的なまとめまでに至っていない。これらの研究で予定していた文献、とりわけ古書の入手が済んでいないのでそれを進める。これは、「物品費」に関わるものである。 一方、「旅費」については、奈良教育大学と京都教育大学における調査に関し、追加して調べたい部分が生じたのでそれに当てたい。「人件費・謝金」については、資料整理補助等のために謝金として使用する。そして、その他に関しては、主たるものとして、報告書作成代と学会誌投稿料として使用する。
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