長野県諏訪市では,2008年度から,公立小・中学校の全校(小7校,中4校)において,小1から中3までの9年間を一貫した必修教科「相手意識に立つものづくり科」が特設された。本研究の結果,この「ものづくり科」の営みの核心は,児童・生徒が,自分(製作者)以外の者が利用する物品を製作し,他者に提供するという,資本主義社会の商品生産の基本的特質を教育活動の基盤に置いていることにあることが解明された。その意味で諏訪市のこの取り組みは,多様な実習を通して,現実社会を成り立たせている原理へ子どもたちを導き,彼・彼女たちに社会で通用する力量を身につけさせようとする,社会性に富む重い試みであると評価できる。
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