単元構成における「題材」概念の成立と変容過程の研究

2012 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 23531165
• 研究機関: 東京学芸大学
• 研究代表者: 山田 一美 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (80210441)
• キーワード: 題材 / 中心概念 / 図画工作科・美術科 / 単元構成 / 主題・モチーフ / 教材概念 / 古典題材 / カリキュラム論

研究概要

本研究は「題材」概念の教育用語への受容と成立、現代的意義を整理することを目的とする。そのため、概念の変容過程を検証し、学校美術教育と題材概念の関係について研究をすすめてきている。とくに学校教育の図画工作科・美術科の「題材」概念は、受容・成立・変容したと考えている。平成23年度の研究成果によれば、昭和30年代の「題材」概念は、暖味であった。その後、中学校美術指導資料「美術科における指導計画の作成」（1982）において、「題材」の概念は、美術科の学習活動の実際に目を向け「教帥と生徒をつなぐ媒体」として提示された。今後、小学校の「題材」概念を合わせて比較・検討する必要がある。一方、一般美術にかかわる「題材」概念を同時に整理することは避けられないものとなった。そこで、今日の大きな美術展の図録解説を見ると、「題材」概念は、「主題」と密接に絡み合い、題材と主題の関係を踏まえ、学校美術教育の題材概念を描く手順が必要であると判断した。平成24年度後半は、美術館展の図録から、題材と主題の関係を整理した。対象として、古典美術を含む充実した美術館展、すなわち大英博物館展、ベルリン美術館展、マウリッツハイス美術館展の図録に掲載の論文と作品解説を検討した。その結果、フロマンタンやレイノルズが洞察したように、「主題」から「題材」へという転換が図られていた。つまり、物語的なエピソードをもつ歴史・宗教・神話の一場面を表現してきた絵画から、それを必要としない絵画が誕生した後、「主題」では語られず、事物の対象としての「題材」で語るしかなくなったとみる。「読む」絵画から「見る」絵画への転換がここにあった。これらの論点を踏まえると、日本において静物画、風景画を中心とするかつての学校美術教育が、「主題」で語らず「題材」という概念によって、「表現する内容」を押さえようとする背景が見えてきた。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

「題材」概念に対する「主題」「モチーフ」「教材」等の概念との関係を十分に検討しきることができなかったこと。戦後の学校教育における小学校図画工作科の「題材」概念の展開について、整理が遅れたこと。大学業務が増え、十分な時間及び調査日程の確保ができなかったことによる。

今後の研究の推進方策

戦後の図画工作科における「題材」概念を整理し、中学校美術科と比較検討する。
その成果を加え、一般美術界に使用される題材の概念、研究者が使用する題材の概念等を比較し、最終的に研究目的である「題材」概念の教育用語への受容と成立、現代的意義を整理し、３年間の研究をまとめ、成果発表する。

次年度の研究費の使用計画

I．総額　720,520円
II．内訳
１．物品費　88,520円：○文具事務用品　48,520円/○電子辞書　カシオエクスワードXD-N4900(1×@40,000円)=@40,000円/　２．旅費 342,000円：○都内交通費:・美育文化協会・教育美術振興会資料閲覧（1人×10回×@2千円）=20,000円/○大学美術教育学会京都大会10月,2泊3日(1人×@62,000円)=62,000円/○美術科教育学会奈良大会 平成26年3月，2泊3日(1人×@6,000円)=60,000円/○InSEA国際芸術学会研究発表（オーストラリア、1人×7日間）=200,000円/　３．人件費・謝金 140,000円○訪問調査対象者への謝金(8月,2人×@10,000円)=20,000円/○資料整理補佐員（1人×@10,000円×6ケ月）=60,000円/○英文校閲(10頁×@6千円=60)60,000円/　４．その他 150,000円：○大学美術教育学会誌投稿料(8頁)=30,000円/○美術科教育学会誌投稿料(10頁)=20,000円/○実績報告書印刷100冊，(50頁×@2,000円)=100,000円

研究成果

• [学会発表] 美術館展解説図録にみる主題・題材概念－大英博物館展、ベルリン美術館展、マウリッツハイス美術館展図録から－ (2013)
  • 著者名/発表者名: 山田一美
  • 学会等名: 第35回美術科教育学会島根大会研究発表概要集
  • 発表場所: 島根大学教育学部
  • 年月日: 20130327-20130329