本研究は「題材」概念の教育用語への受容と成立、変容を確かめ、現代的意義を探ることである。1950年代後半、美術教育では絵画、彫刻、デザイン、工作・工芸、鑑賞による教科内容が確立し、領域中心の題材構成が主流となる。1970年代、題材概念は合科・総合教育、造形遊び等の問題を契機に変化する。1982年、美術指導資料において、題材は「教師と生徒をつなぐ媒体」と定義される。同時に、題材概念は、現代アート、経験主義の思想、プロジェクト、ESD等の方法の影響を受け変容する。結果、題材は、可視的対象物としての意味を越え、子ども・教師・環境の相互作用から生成される「経験」を包む総体として機能している。
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