本研究は、大きく次の2点を研究目的としてきた。 (1)1980年前後から「知識基盤社会」と言われる今日に至るまでの社会上・思想上の大転換の中に国語科教育の諸問題を置き直すことで、国語科教育に生じていた転換の意味を明らかにすること。 (2)それを踏まえ、「言語活動」の意味を問い直し、その指導のあり方を筆者が開発中の方法(指導事項の「分割」と「分析」、及び発問の構造化など)と「横浜スタンダード」(横国大)や「教職員キャリアステージにおける人材育成指標」(横浜市教委)を連動させた教員養成・育成研修に資する学習プログラムとして提示すること、である。 このうち(1)については、「知識基盤社会」の特徴を、グローバル化、情報・知識、管理社会、の観点から整理することができ、これは日本では中曽根内閣時代の臨時教育審議会が背景とした社会構造の変化の中から生じてきたものと言える。したがって「言語活動」とは、そうした新たな社会で生きていくために必要とされる力であるとともに、そうした社会のパラダイム転換のためにも重要な力という側面をもっている。 (2)については、横浜国大と横浜市教委とが意見交換しつつ「横浜スタンダード」の改訂版として「横浜国立大学教員養成スタンダード」を作成し、横浜市は「人材育成指標」の改訂を行った。また横国ではそれをもとに「教育実習ガイドブック」を作成し、横浜市では「教育実習指導者用サポートガイド」を作成した。筆者は、それらの中心となって双方の研究を方向付けるとともに、授業や講演等で、スタンダード、人材育成指標と「指導事項の分割と分析」を関係づけた授業づくりのあり方などについて提案するとともに、「横浜国立大学教員養成スタンダードとカリキュラム等の構造化について」として、その方向性をまとめることができた。
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