研究課題/領域番号 |
23531170
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
柳沼 宏寿 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00377178)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | シネリテラシー / 国際研究者交流 / オーストラリア |
研究概要 |
平成23年度は、「シネリテラシー」の意義についてオーストラリアの先行研究調査と日本における具体的実践を基に明らかにすることを目標として進めた。 まず、オーストラリア訪問においてチャールズ・スチュアート大学のジェーンミルズの協力を得てネリテラシーの先行研究の経過を調査した。シネリテラシーは、ニューサウスウエルズ州の学力向上対策として2001年に開始されたPSFP(Priority Schools Funding Program)に指定され、そこで開発されたプログラムは2003年から2005年までに30以上の学校において取り組まれたこと、そして多民族国家として抱える諸問題を克服するために大きな効力を発揮してきたことを知ることができた。また今後の継続研究として、バサースト市主催の協議会に参加しシネリテラシーを通した日豪連携実践への提言を行うことにより交流具体化へ向けて行政の協力の手応えを得ることができた。 日本における実践として「シネリテラシーフェスタ2012」を全国公募し12月10日に新潟市、17日に福島市において上映会を開催した。制作した子どもたちのレッドカーペット入場や表彰などによって映画文化を体感させると同時に学校・社会・親という三者がこどもの表現を支える構図を構築した。参会者からは高い評価を得ると共に来年度継続の要望も得ることができた。福島市の上映会ではシンポジウムを開催し、本企画の意義を出品校の担当教師や行政、オーストラリア学会会員等によって協議し、本企画の教育的価値が共有化された。 上記の他に、本宮方式映画教室運動の実地調査を並行して進めてきた。当時の関係者から聞き取り調査を行うことにより、この運動の歴史的・教育的価値が浮き彫りにされてきた。その研究成果について、24年の6月に本宮市において地元の関係者や有識者を招聘してシンポジウムを開催し公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
先行研究調査としてオーストラリアを訪問し、推進者であるジェーン・ミルズからの聞き取り調査によって、ニューサウスウエルズ州教育省の支援について多文化主義政策との関連から明らかにすることができた。また、連携協力を進めているバサーストハイスクールを訪問し担当教員と生徒から教育現場の実態を調査することができた。さらにバサースト市主催の日豪連携協議に参加し、シネリテラシーを通した日豪交流の具体的プランが固まってきたことは想定を大きく超えた進展であった。 日本での「シネリテラシーフェスタ2012」の実践は、これまで新潟で三回実施してきたが、今回は福島市で第一回を開催することができた。このことは、震災後の福島における教育文化を活性化させると共に、本企画が全国へ展開する足がかりになると思われる。また、これまで参加した教師や子どもたちからの感想により、「映像メディアによる表現」の「メタ認知」をもたらす教育学的な意義や映画文化の観点から子どもの表現を支えるという社会学的な価値なども浮き彫りにされてきた。 そして、「本宮方式映画教室運動」の研究では、当事者からの聞き取り調査を行うことによって当時の社会背景の影響を受けていた教育事情に果敢に立ち向かっていた母親達の姿を知ることができた。この歴史的事実には現代の日本の教育が回復すべき教育学的な意義が包含されており、今後全国へ発信する価値が認められる。また、この調査によって地域の関係者とも協議を進めることができた。その気運は24年6月にシンポジウムを開催する気運へつながった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目標を達成するために、今後はシネリテラシーの実践について認知心理学的かつ社会学的な検証を日豪の研究者による協議によって進めていきたい。 具体的にはオーストラリアの研究者(チャールズ・スチュアート大学のジェーン・ミルス)を招聘してシンポジウムを企画し、教育的成果の紹介と情報交換をすることにより、日本における実践の可能性を見出すとともに日豪の連携実践の足がかりにする。 実践としては、作品の全国公募を行い、作品上映会「シネリテラシーフェスタ2013」を新潟、福島(福島市・会津若松市)、広島の4箇所で開催することを目標として運営しながら現場の実践を調査する。作品の公募に際して、オーストラリアの作品との交流も取り入れる。 また、日本におけるシネリテラシーの原型である『本宮方式映画教室運動』についてフォーラムを企画し、日本における優れた教育実践の歴史を広く発信する。このことを通して、「映画制作」という題材の特質が「学校」「映画館」「家庭」の三者連携といった社会的環境整備を創出する側面を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費として、オーストラリアの研究者との連携協議を進めるための旅費(オーストラリア1名分)と、助言指導のため国内の研究者を招聘する旅費(2名分)、さらに国内調査、会議出席、学会発表のための旅費を使用する。 謝金としては、各会議・フォーラムにおける講師、指導助言者に対して使用する。 その他として、会議費で新潟(1回)、福島(福島市1回、本宮市1回)、広島(1回)を計上し使用する。国際会議においては翻訳料(通訳も含む)として使用する。その他、参考文献、事務用品、メディア等の費用を使用する。
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