最終年度は、オーストラリアの多文化主義政策の一環として実施された「シネリテラシー」が、日本においても社会の多様化という教育的課題の克服にどのような効力を持つのかについて、「映像メディアによる表現」の推奨を全国公募で「シネリテラシーフェスタ」の企画運営を通して実践的に研究を進めると共に、国際学会においてその成果を発表してきた。 実践研究面では、新潟市と福島市の二箇所で上映会を開催し、それぞれの地元の中学生や高校生が保護者や学校関係者そして地域の人々と共に鑑賞し激励する状況を定例化することにより、映像メディアによる表現の教育的意義を広く発信することができた。特に、日本映画大学特任教授千葉茂樹氏を招聘しシンポジウムにて現場の実践者と協議することにより、現場へ広く普及させていくための足がかりとなった。千葉氏は、これまで並行して調査研究を進めてきた本宮方式映画教室運動の当事者でもあり、映像メディアによる表現の歴史的な検証にも大きな示唆を得た。また、シンポジウムでは福島大学の研究者とも情報交換を図り、今後の復興支援における可能性についても協議を深めることができた。 さらに、11月に大阪で開催された国際学会「FilmAsia2013」において、オーストラリアのHane Millse、慶應義塾大学の塩原良和氏(他二名)と共に、オーストラリアの教育政策と日本の教育について、文化比較研究を基盤とした映像メディアに関する共同発表を行った。この機会を通して、これまで三ヶ年の研究の成果を国際的に公開することができたと同時に、日豪の交換上映会を中心とした今後の情報交流の見通しを立てることができた。まずは4月4日・5日にシドニーで開催されるシンポジウム「The New Uses of Literacy symposium」へパネラーとして招聘を受け、今後の交流と研究の深化へ向けての足がかりを得た。
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