研究課題/領域番号 |
23531187
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
山田 綾 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50174701)
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キーワード | 対話 / アクションリサーチ / 言語活動 / 差異 |
研究概要 |
本研究では,近年重視されている教科学習における「言語活動の充実」において,「対話」の構築を軸に取り組むこと,加えて価値観が多様になり,子どもの関係構築が困難な現代においては子どもの「差異」に着目してそれを意味あるものとして位置づけ尊重しつつ違いをすりあわせる「対話」を重視することを提言するものである。そうすることで,「子ども」を教室空間と世界を意識化する主体として位置づけることが可能になると考える。本研究では,このような「対話」の現代的意義と可能性,並びに「対話」構築の条件や方法を,アクション・リサーチにより教師とともに教室での出来事から実証し,あるいは問い直していくことを目的としている。 今年度は,生活現実と課題に関する教科学習(家庭科など)において,家族や性、消費に関する現代生活を子どもたちが探究していくなかで、実習や調査で発見した事実やそれを巡る仲間の声、あるいは教師から提示した「福島の子どもたちの声」に出会い、自分の生きづらさの元にある現代生活の見方や考え方を捉え返していくことが可能であることを実践研究により検討した。また,現在推進されている「教科における言語活動の充実」を子どもたちの語り合いの場に組み換えていく必要性を提案した。加えて,自閉症スペクトラム障がい(ASD)などの子どもたちがいるクラスや前年度にトラブルが生じたクラスにおいて,そのような学びと対話を立ち上げていく難しさと重要性についても検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
家族や性,消費に関する現代生活を子どもたちが探究していく教科の授業における対話の意義や可能性とともに条件と課題などが明らかになり,一定の成果があった。他方で,いろいろな教科においていろいろな課題をもつクラスでどのようにテーマと対話を立ち上げていくのか,アクション・リサーチ体制を立て直し実践的課題や方向性について再検討する必要がある。また,北欧におけるナラティブ・ラーニングの実践の収集と分析が遅れており,十分に調査・検討することができなかった。理由としては,スウェーデンとフィンランドにおいて,コンタクトをとっていたり,注目していた研究者が大学を転出したこともあり,調査の条件を整えることが困難になったためである。
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今後の研究の推進方策 |
(平成25年度)文献研究とアクション・リサーチにより,以下を進める。 一つは、「対話」の構築のための実践方略(条件や仕組み,教科のテーマや方法など)を検討する。二つ目は,子どもの現状と政策や消費文化など社会的・文化的背景に関する北欧と日本の共通性と相違の検討を行う。3つ目は,北欧の「対話」やナラティブ・ラーニング実施校のプロジェクトの分析を深め,特徴を整理する。4つ目は,「対話」実践の評価を行う。教師の観察記録を分析し,どのような変化が見られたかを明らかにしたり,子どもへの聞き取り調査を行ったりする。 (平成26年度)前年度のアクション・リサーチの結果をふまえ,対話並びに対話的関係の構築における課題を捉え直し,実践方略を見直し,実施過程の記録の整理や分析を行う。特に,日本と北欧との社会的環境や学校・教室空間の違いを検討した上で,北欧のプロジェクトとの比較を行う。「対話」実践とアクション・リサーチの評価を行い,研究成果を発表したり,公開講座や講義に活用できるように電子データを整理・加工し,現職教員や学生たちと検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた調査の日程変更により,調査旅費に残額が生じた。 1.関連文献の収集と分析を小中学校の教師と行い,教室や教科の課題に応じたプログラムを考案する。(資料・図書費 10万円) 2.北欧の「対話」やナラティブ・ラーニング実施校のプロジェクト情報の収集・検討を行う。(資料・図書費5万円,翻訳料30万円,外国旅費40万円を使用) 3.前年度の記録も踏まえ,プロジェクト実施校の教師と共同で,教室空間の現状と子どもの課題を,参与観察や調査などにより明らかにするための会議を開催し,情報を交流・共有し,アクション=「対話」実践の構築のための,条件,仕組み,教科のテーマ・教材開発の視点を検討する。(国内旅費50万円,会議費3万円,教材費10万円) 4.実施過程を参与観察し,分析材料に加工する。(謝金5万円)
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