本研究では,近年重視されている教科学習における「言語活動の充実」において,「対話」の構築を軸に取り組むこと,加えて価値観が多様になり,子どもの関係構築が困難な現代においては子どもの「差異」に着目してそれを意味あるものとして位置づけ尊重しつつ違いをすりあわせる「対話」を重視することを提言するものである。そうすることで,「子ども」を教室空間と世界を意識化する主体として位置づけることが可能になると考える。本研究では,このような「対話」の現代的意義と可能性,並びに「対話」構築の条件や方法を,アクション・リサーチにより教師とともに教室での出来事から実証し,あるいは問い直していくことを目的としている。 今年度は,主に3つのことを行った。第1に,対話や討論と公共性並びに公共空間との関係の整理をこれまでの実践記録の分析から行った。具体的には,2012年度に行った実践とそれに関する生徒のインタビュー調査,並びに2013年度に行った実践と生徒のインタビュー調査の結果を検討した。第2に,第1の点について,学会発表を行ったり,紀要にまとめた。第3に,上記の点は主に中学校において実践したものであるため,小学校中学年での可能性を検討するために,小学校4年生の「総合的な学習時間」において1年間にわたり実践を試行的に行ってみた。また,A大学附属O中学校で様々な教科で対話や討論が「学んだこと」をつくりだし明確にするために必要であり,また「学んだこと」により活発に展開されることを検討した。
|