研究課題/領域番号 |
23531189
|
研究機関 | 京都教育大学 |
研究代表者 |
石川 誠 京都教育大学, 教育学部, 教授 (00293978)
|
研究分担者 |
水山 光春 京都教育大学, 教育学部, 教授 (80303923)
土屋 雄一郎 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (70434909)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | フェアトレード / 「効率」と「公正」 / 学習モデル開発 |
研究概要 |
本研究は,平成20年度改訂の中学校学習指導要領において加えられた「効率」と「公正」の概念に関して,フェアトレードを視点として社会科公民教育の学習モデルを開発することを目的としている。平成23年度においては,(1)フェアトレードの「効率」と「公正」の観点からの理論研究,(2)英国等と日本のフェアトレードに関する市民教育,学校教育の現状分析,を中心に研究を進めた。 (1)については,特に経済学の視点を中心に分析を進め,主要な題材としてタンザニアにおけるコーヒー生産を取り上げた。具体的には,現地でのコーヒー豆の取引形態について,取引価格がどのように形成されるかということを「効率」と「公正」の視点から分析した。1980年代以降の経済のグローバル化に伴って,構造調整の名の下で取引の「効率化」が進んだ点等を明らかにした上で,フェアトレードの取引によって,コーヒー豆の価格がその生産者にその地域の他の収入機会とほぼ同等の収入を,天候やコーヒーの世界市場の変動に左右されずに長期間にわたって保障するような水準に設定されるならば,生産者から消費者へのリスクの転化が行われ,一定の「公正さ」が担保される等の論点を整理した。これらにより,フェアトレードの生産者との取引という場面での「効率」と「公正」を考える上での基礎的な知見を得ることができた。 (2)については,英国の先駆的なフェアトレード・タウンであるヨーク市において行われている市民のフェアトレードに対する理解を促進する活動を中心に分析した。特徴的な活動としては,行政が主体となって途上国から生産者を招き市民との対話をさせることや学校でのフェアトレード活動を推進するために教師に対する教育を行うこと等があった。日本においては,このような活動はまだまだ十分には行われておらず,これによって日本での活動を考える指針を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的の一つとして,英国等でフェアトレードを市民教育や地理教育,シティズンシップ教育等の学校教育においてどのように扱われているかについて調査・分析を行うことがあるが,平成23年度に予定していた海外調査が実施できなかった。これについては文献等での研究を行った上で実施する予定であったが,この研究が予定より遅れたことが原因となっている。そのため,平成23年度に関しては,この研究目的については文献等の分析・研究のレベルに留まっており,その分だけ研究目的の達成度がやや遅れていると考えている。 尚,もう一つの研究の目的であるフェアトレードの「効率」と「公正」の観点からの理論的分析については,おおよそ予定通りに進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究に関して,平成23年度に得られた研究成果をベースとして,平成24年度においては次のように研究を進める予定である。(1)理論研究として,消費者がフェアトレード商品を選択する際の意思決定において「効率」と「公正」の概念とはどのようなものであるかについての分析を進める。さらに,途上国の生産者にとって,フェアトレードの持つ「効率」と「公正」の概念はどのような意味を持つかについての分析を進める。これについては,フェアトレード生産国での聞き取り調査等の実施を考えている。(2)開発研究として,フェアトレード先進国である英国等と日本のフェアトレードに関する市民教育,学校教育について,「効率」と「公正」の観点から調査を行い比較分析等を進める。そのため,国内の例として東京,福岡,仙台,熊本等のフェアトレードの盛んな地域での調査を予定している。また,海外の例として英国等における調査を行う予定である。特に海外での調査においては,市民教育,学校教育のプログラムを調査するだけではなく,平成23年度において行ったヨーク市の文献調査で得られた知見をベースに,市民自体がフェアトレードにおける「効率」と「公正」についてどのように考えているということも明らかにしていきたいと考えている。(3)上記の(1)及び(2)で得られた成果をベースとして,フェアトレードを題材とした「効率」と「公正」に関する社会科公民教育の学習モデルの枠組みを考察する等の作業に着手し,学習モデル開発についても進めていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究の当初の研究計画では,平成23年度において海外調査を予定していたが,文献調査等の進み具合あるいは調査を予定していた相手先との時期等の調整がうまくいかなかった等の理由により海外調査を実施できなかった。そのために,「次年度使用額」に約150万円が残額としてある状況となっている。 平成24年度については,研究費の使用計画として次のように考えている。(1)設備備品費については,フェアトレードに関する文献,資料,フェアトレードに関連する市民教育,学校教育についての文献,資料として250千円,(2)消耗品費については,記録メディア,プリンタインク等の事務用品費として150千円,(3)国内旅費については,国内のフェアトレードの関する市民教育,学校教育に関する調査・研究旅費として600千円(1人1回50千円×4回×3人),(4)外国旅費については,フェアトレード生産国での調査・研究旅費及びフェアトレードに関する市民教育,学校教育に関する調査・研究旅費として2100千円(1人1回350千円×2回×3人)を使用する計画である。
|