研究課題
本研究は,平成20年度改訂の中学校学習指導要領において加えられた「効率」と「公正」の概念に関して,フェアトレードを視点として社会科公民教育の学習モデル開発を行うことを目的としている。平成23年度~平成25年度においては,(1)フェアトレードの「効率」と「公正」の観点からの理論研究,(2)英国,オランダなどと日本とのフェアトレードに関する学校教育,市民教育の現状分析及び比較を中心に進めてきた。平成26年度は最終年度として(1)(2)について研究をまとめていった。理論研究においては経済学からの分析を中心に行った。結論としては,フェアトレードも経済活動である以上「効率」を無視しては成り立たないが,「効率」は当事者が対等あるいはそれに近い状況の下で成り立つのであり,フェアトレードのように途上国の小規模生産者と先進国の大企業との関係で見た場合に,「公正」を担保する土台がない状況では「効率」は機能し得ないということが明らかになった。また,その土台としては,法律的,制度的な枠組みが必要とされると考えた。開発研究に関しては,オランダのフェアトレードに関する学校教育,市民教育の実態調査を行い,前年度までの英国ヨーク市についての分析と合わせて,日本との比較研究を行った。オランダでは,英国と同様にフェアトレード推進団体がフェアトレード商品購入のインセンティブを与える機会として市民教育を積極的に取り組んでいることが明らかになった。また,視察した教員養成大学(Marnix Academie)では,大学を挙げて持続性,フェアトレード,エコロジーを実践し,教師となった際に生徒に知識を教えるだけではなく自ら行動できる能力を養っていることなど,日本ではあまり実践されていないことが重要であることが認識できた。それらの知見を基にして,現在,フェアトレードに視点とした学習モデルを開発している。
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Citizenship Teaching and Learning
巻: Vol.10, Number1 ページ: pp.7-23
京都教育大学教育実践研究紀要
巻: 第15号 ページ: pp.43-51
道徳教育方法研究
巻: 20 ページ: pp.61-63