研究課題/領域番号 |
23531191
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
吉永 潤 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (50243291)
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キーワード | 交渉能力育成 / 社会科教育 / 公共圏の同心円構造 / 外交交渉 / 合意形成 / 集団の幸福追求 / ゲーム |
研究概要 |
本研究の課題は、1.公共圏の同心円的階層性を暗黙に仮定してきたと考えられる社会科理論・実践を批判的に検討し、2.自集団とは根本的に異質な利害や公共原理を持つ他集団との交渉の能力を育成するための社会科教育理論を構成するとともに、3.その教育方法としてのゲームの開発・実施・評価を行うことにある。初年度(平成23年度)は上記課題1を遂行し、外交事象を扱った従来の社会科理論・実践を批判的に検討し、外交意思決定能力育成の方略を構想する2本の論文(査読付き)を執筆した。平成24年度はこれに基づき、上記課題2および3に取り組んだ。 2の成果としては、次の2点の問題を解明した。(1)社会科における「政治」概念が根本的に合意志向性を帯びているという問題。合意志向の規範的前提のもとでは、交渉能力育成の目標は位置づき得ない。交渉とは合意それ自体をめざすものではなく、自己・自集団に有利な合意をめざすものだからである。この問題は、交渉能力育成という課題を越えて民主政治の実践者の育成という社会科の根幹の課題にかかわる。以上の考察は、論文(査読付き)にまとめ現在投稿中。(2)社会科における「自由」「権利」概念が、集団や権力に対する個人の自由・権利のみを意味しているという問題。交渉とは集団が他集団との関係の中で自由や権利(ないし幸福)追求を行う行為であり、個人は、集団の一員としてその行為に参画する。従来の社会科には、このような集団的自由・権利・幸福追求行為は位置づき得ない。以上の考察は、近日単行本にまとめる予定。 3の成果としては、交渉を体験するゲーム開発の予備的作業として、利潤追求を体験するパン屋経営をキャリア教育カリキュラムの一環としてゲーム化し、中学校において実施し効果検証を行った。この成果は論文(査読付き)にて公刊した。 最終年度は、外交交渉を体験するゲームの開発と実施、効果検証を課題とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究が課題とする理論研究と実践開発のうち、理論研究に関しては、この2年間で投稿中を含む3本の査読付き論文の公刊・執筆を行っており、おおむね順調に成果を見ていると考える。また、実践開発に関しては、予備的な実践開発作業とその成果を1本の査読付き論文にて公刊しており、これもおおむね順調といえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の研究課題として、次の3点を計画している。 1.外交交渉を体験するゲームの開発、実施、評価―歴史上の外交交渉を事例にとり、その基本的史実を枠組みとして設定した上で、交渉を体験する学習者間の交渉の帰趨により、史実からは自由な結果が導かれるような設定とする。現在、ポーツマス条約をめぐる日露交渉、およびキューバ・ミサイル危機をめぐる米ソ交渉を素材として選定し、資史料を収集・分析中。 2.上記のゲームを、まず大学生を対象として試行実施し、改良を経て、高校生ないし中学生を対象として実施し効果検証を行う。対象校は私立中高一貫校を想定(交渉中)。 3.本年度、外交および外交史を対象とした米国での研究シンポジウムに出席がかなわず断念した(入試日程との重複による)。次年度は、海外調査として、上記のポーツマス条約およびキューバ・ミサイル危機交渉ともに深く関連をもつ米国東海岸(ポーツマス、およびワシントン)でのフィールドワーク、資史料収集を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.海外調査および国内移動―本年度、本務校公務との重複により海外でのシンポ出席を断念した。次年度は、研究会合ではなく、ゲーム開発に直接資するフィールドワークと資史料収集を目的として海外調査を企画している。また、特にポーツマス条約に関し、国内で日本側の資史料を収集することが必要。その他、ゲーム実施に係る交通費等が発生する。 2.書籍―上記活動以外にも必要・参考資史料、研究書の収集を要する。 3.アシスタント雇用―ゲームの試行実施および本実施においてデータ収集、整理(ゲーム実施状況の録画、効果検証のための調査紙の集計、等)のために学生アシスタントを雇用する。 4.ゲーム実施に関するデータ収集と処理に係るAV機器、情報機器を要する。
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