研究課題/領域番号 |
23531194
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
嶋田 由美 和歌山大学, 教育学部, 教授 (60249406)
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研究分担者 |
小川 容子 鳥取大学, 地域学部, 教授 (20283963)
水戸 博道 明治学院大学, 心理学部, 教授 (60219681)
村尾 忠廣 帝塚山大学, 現代生活学部, 教授 (40024046)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | リズム変容 / 「ぴょんこ」 / 「ぴょんこ止め」 / 唱歌 / 等拍 / 印象評価実験 |
研究概要 |
平成23年度当初は、「ぴょんこ」リズムをめぐる仮説萌芽期として捉え、歴史的調査研究、実験的実証研究のそれぞれの分野ごとに研究を開始した。歴史的調査研究班では、「ぴょんこ」リズムへの変容が見られる唱歌が録音されたSPレコードを収集し、その中から「ぴょんこ」リズムへの変容箇所を抽出し、実験的調査研究班へ音源を提供した。またリズム変容が見られる唱歌の歌詞の分析から、日本語の歌詞が持つ特性そのものがリズム変容に大きく影響しているという点に着目した実験研究の必要性を提起した。一方、実験的実証研究班は、SPレコード音源を用いた印象評価実験と記憶・再生実験を行い、等拍リズムから「ぴょんこ」リズムへの変容の様相の一端を明らかにしようとした。その結果、出版された楽譜が等拍リズムで書かれているにも関わらず、当該時期に録音されたSP音源では、様々な長短パターンによる「ぴょんこ」リズムで歌われた曲を同定することができた。また等拍リズムで聴取したにも関わらず、再生実験時に「ぴょんこ」リズムとして歌唱される傾向があることも確認された。これらの研究成果は、この課題での研究に入る前年度から予備的に行われていた研究成果と共に第8回アジア環太平洋国際音楽教育学会(台北)で口頭発表され、また小川容子によって「等拍リズムからぴょんこリズムへの変容 ―印象評価実験と記憶・再生実験をもとに―」(『地域学論集(鳥取大学地域学部紀要)』(第8巻第2号)にもまとめられた。さらに平成23年度の後半期にはリズム変容に関する両班の課題意識が日本語歌詞との関連性に焦点化されたことを踏まえ、共同的な研究の推進を図り、日本語の促音、撥音、拗音、長音を含む歌詞を被験者に与えて自由に旋律を作らせる実験を考案し、約50名の被験者に予備実験を行い、平成24年度に本格的に実施する旋律創作実験に向けた歌詞課題や実験方法の検証を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では実験的実証研究班の領域で数項目の研究計画をたてていたが、歴史的調査研究班の研究成果に基づき、平成23年度は年度の「研究計画・方法」に掲げた諸項目のうち、「等拍」と「ぴょんこ」リズム間の変容に関する仮説を立てて数種類の予備実験を繰り返すという項目を特に重点的に扱い、次年度の本実験のための実験課題と手法の吟味を目指して研究を推進した。この仮説とは即ち、「研究目的」にも記したように、「ぴょんこ」リズムの生成は日本語の促音、撥音、長音などと密接に関連づけられるというものである。予備実験の結果、この仮説がある程度まで検証されている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、日本語の歌詞と「ぴょんこ」リズムの生成という点に着目して行った前年度の予備実験を発展させた本実験を行い、日本語の促音、撥音、長音のそれぞれがどのように「ぴょんこ」リズムの生成に作用を及ぼすかを明らかにする。また「研究の目的」に記した仮説の第3点目、即ち、歌われる速度との関係性を明らかにするために、複数の条件下での実験を並行して行う。これらの実験結果は年度内の日本音楽教育学会等の全国大会において口頭発表を行い、関連する領域の研究者からの示唆を得てさらに検証実験の精緻化を図る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、前年度に引き続き「ぴょんこ」リズムへの変容が顕著であった時期に作成されたSPレコードの収集と音源の分析のために研究費を使用する予定である。また歌詞を使った旋律創作実験の本実験結果を分析するにあたり、相当数のデータ分析の研究補助者が必要であり、当初の研究実施計画に即して研究費を使用し研究の推進を図る予定である。
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