研究課題/領域番号 |
23531199
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
加藤 寿朗 島根大学, 教育学部, 教授 (30274301)
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研究分担者 |
梅津 正美 鳴門教育大学, 学校教育研究科, 教授 (60284329)
前田 健一 岡山商科大学, 経済学部, 教授 (90101451)
新見 直子 広島文教女子大学, 人間科学部, 准教授 (40584280)
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キーワード | 社会科教育 / 社会認識 / 社会的思考力・判断力 / 認識発達 / 社会科教授書 / 実験的授業 / 社会科授業モデル |
研究概要 |
本研究の目的は,小・中学生の社会的思考力・判断力の発達に関する実証的データの収集と発達に基づく小・中学校社会科授業モデルを開発することにある。具体的には,次の3点を研究目的として設定した。1.小・中学生の社会的思考力・判断力の発達に関する量的・質的調査を行い,発達の様相及び認識・発達のメカニズムとその条件を明らかにすること。2.子どもの社会的思考力・判断力の発達を促進(形成)する条件及び指導方略について実験的な授業を通して明らかにすること。3.研究の1と2の成果をふまえながら,発達に焦点をあてた社会認識形成の基礎理論を検討し,子どもの社会的思考力・判断力を促進する小・中学校社会科授業モデルを開発すること。 本年度は上記研究目的のすべてに対応した研究を進めた。具体的には以下のような研究を行った。 (1)子どもの社会的思考力・判断力の発達を把握するための縦断的調査の結果を,これまでの横断的調査研究のものと比較しながら分析し,社会認識発達の内的過程についての一般的な傾向について検討した。 (2)子どもの社会的思考力・判断力の発達に関する研究成果を学会等で公表し,意見を踏まえながら発達に焦点をあてた社会認識形成の基礎理論について検討した。 (3)子どもの社会的思考力・判断力の発達を促進(形成)する条件及び指導方略についての考え方を内包する社会科授業を検討して教授書案を作成した。 (4)作成した教授書案を実験的授業対象の子どもの実態に即した指導細案に実践者と相談しながら変換し,分析手続きの検討,プリテストやポストテストの作成等,実験的授業の準備とその一部の実施を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】で述べたように,本年度は社会的思考力・判断力の発達を把握するための縦断的調査結果を,これまで公表してきた横断的調査結果と比較・検討しながら社会認識発達についての一般的傾向について検討した。その結果,中学生の社会的思考力・判断力の発達的特徴として次の2点が指摘された。一点目は,中学生の思考力・判断力は,学年進行に伴って高くなることである。二点目は,中学生の思考力・判断力は,特に2年生から3年生にかけて伸長する傾向が見られることである。これらの結果は,中学生の社会認識発達の連続性(学年進行に伴う思考力・判断力のレベルが上昇)と不連続性(能力が著しく伸長する時期の存在)という特徴を示唆しており,子どもの社会認識発達には量的増加と共に質的に異なった段階(質的な転換)が確認された。 本年度はさらに,これらの発達仮説に基づいて子どもの社会的思考力・判断力の発達を促進・形成する条件及び指導方略について実験的授業を通して明らかにすることを予定していた。発達を促進・形成する指導方略についての考え方を内包する社会科教授書案の作成と実験的授業の手続きの検討は当初の予定通り進められたが,実験仮説である社会認識発達の質的転換期が「2年生から3年生にかけて」であることから,実験的授業の実施はその一部を本年度末に行い,残りの授業は次年度当初に実施を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度である本年度は,これまでの進捗状況を踏まえて次の3点の研究を中心として行う。その際,社会科の教育内容に即した形で発達的データを収集すること,また分析にあたっては心理学的手法を用いることから,研究代表者と研究分担者のより緊密な共同研究体制を構築し,調査計画・実施・分析という一連の研究を行う。 (1)子どもの社会的思考力・判断力の発達を促進(形成)する条件及び指導方略について実験的授業を通して明らかにすること。 (2)実験的授業の結果をふまえながら,発達に焦点をあてた社会認識形成の基礎理論を検討し,子どもの社会的思考力・判断力を促進する社会科授業モデルを開発すること。 (3)(1)と(2)の結果を踏まえて,子どもの社会的思考力・判断力の発達に関する研究成果を学会等で公表し,意見を踏まえながら発達に焦点をあてた社会認識形成の基礎理論を明らかにすること。
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次年度の研究費の使用計画 |
子どもの社会的思考力・判断力の発達に関する調査結果に基づく実験的授業については本年度中の実施を予定していたが,実験仮説である社会認識発達の質的転換期が「2年生から3年生にかけて」であり,授業の効果を優先させる観点から,その実施を本年度末から次年度当初にかけて行うこととした。具体的には,実験的授業の効果測定に関するポストテストのみ本年度内(平成26年3月19日に実施)に行い,授業実施は次年度当初(平成26年4月~)から行うこととした。平成25年度未使用額は,ポストテストの作成・印刷費,授業分析のための研究打合せ旅費や分析に関わる物品費であり,実験的授業の完全実施に向けて次年度に繰り越した。 研究の進捗状況を踏まえながら,【今後の研究の推進方策】で述べた研究計画に基づき,次年度の研究費は次の2点を中心に使用する予定である。 一点目は,実験的授業の実施及び分析に関わる物品費と授業分析のための研究打合せ旅費である。二点目は,これまでの調査研究の成果及び実験的授業の結果に基づく子どもの社会的思考力・判断力の発達と形成に関する研究成果の発表旅費や学会誌投稿等の成果発表に関わる費用である。
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