研究課題/領域番号 |
23531202
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
吉川 幸男 山口大学, 教育学部, 教授 (40220610)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 歴史学習 / 歴史学習指導 / 問いの生成 |
研究概要 |
本年度は、小中学校の歴史学習諸実践において、歴史への「問い」が生成される脈絡と、その「問い」に対する教師の指導的対応の方法を仮説的に設定するまでを行った。 現在小中学校で通常に実施されている歴史授業における「問い」とその前後の会話を抽出する過程で、複数の中学校現職教員より、現在指導上直面する課題は「授業づくり」「授業構成の在り方」ではなく、「子どもへの対応の在り方」にあり、しかも従来のような等質的・均一的にとらえられた「子ども全体」ではなく、異なる反応を示す複数の子ども集団への対応であることを聴取することができた。このため、当初の研究計画を若干修正し、授業の「計画段階」の開発を主とするのではなく、「実施段階」すなわち「子どもを前にした学習指導の場」の指導論開発に重点をおくこととなった。 国内の文献における歴史授業記録、実践書、指導書等の調査の結果、「問い」及びその前後の脈絡における教師の指導は、「発問・指示」を発すること、資料を提示することなど、「子ども全体」に対する働きかけと、ある程度共通の目標への指導を意味するものと理解されており、個々の子どもの活動への対応を想定した共有知見は確立されていない現状が明らかになった。これを受けて、「子ども」のとらえ方と「指導方向」のとらえ方を類型化することによって、「問い」の指導をめぐるフレームワークを設定し、2名の中学校現職教員の指導を事例に、どのような指導のヴァリエーションが可能かを探り出した。その結果、歴史学習指導における教師の指導言には、(1)「共通性」「差異性」に着目させること、(2)「必然性」「意図性」に着目させること、という2つの指針が、複数の子ども類型への調整的指導として重要な機能を果たしている可能性が導き出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の手法が当初より若干異なるものとなったが、研究の目的との関係ではむしろ今の手法のほうがより学校現場の実態に即した実際的な知見が得られるため、おおむね順調に進展しているとみられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、歴史学習における実態の収集・分析と試案・開発とを並行して行う。前者では、(1)海外の歴史教科書に見られる「問い」の構成の調査、(2)協力教員の歴史授業における「発問」前後の発話データの収集、などを行う。後者では協力教員を得て、歴史資料の種類・提示形態によって生じる「問い」の差異やその後の指導効果に関する評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用予定研究費は、研究の手法においてまず多くのデータを収集するより少数の事例検討によるフレームワーク構築を優先して行った結果生じたものである。今後、上記のような収集・分析・開発を行う経費として使用する予定である。
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