研究課題/領域番号 |
23531204
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
山本 茂喜 香川大学, 教育学部, 教授 (00182626)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ビジュアル・ツール / 創作文 / 物語論 / ストーリーマップ |
研究概要 |
今年度は、主として以下の研究を実施した。1,我が国における創作文指導に関する先行文献と実践、および小学校・中学校の各社国語教科書における創作文指導の実態について、現行のものから過去に遡り、広く調査し、その歴史的な変遷について分析・整理した。2,物語論(ナラトロジー)および認知心理学における物語文法の知見を基盤として、創作文(物語テキスト)の構造について原理的に明確化し、整理した。3,英米におけるクリエイティブ・ライティングの理論書・実践資料を、HPやテキスト類を含め広く調査し分析・検討した。4,主として英米におけるビジュアル・ツールの活用についての文献調査を行った。特にストーリーマップやマインドマップ等、クリエイティブ・ライティングにおいて活用される英米のビジュアル・ツールについての文献を収集・分析し、考察を行った。5,以上の分析検討をもとに、創作文指導のためのビジュアル・ツールの活用について、その原理と方法を明確化し、ビジュアル・ツールの素案(ストーリーマップとキャラクターマップ、機能カードとタロットカード)と指導過程を作成した。6,香川大学附属小・中学校の教諭と、24年度の実践計画について、その概案を作成した。 以上の研究は、「思考力・判断力・表現力」、また「活用・探究」が重視される新指導要領が実施に入った現在、ビジュアル・ツールを活用した創作文指導の原理と方法を明らかにしたものとして、現代的意義を持つものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ビジュアル・ツールの活用による創作文指導の新たな方法を、(1)創作文(特に物語)自体の構造的分析と理解 (2)ストーリーマップを初めとする個々のビジュアル・ツールの特性の分析と把握 (3)学習者の反応と生産された表現物の分析と考察、の三点から捉えようと試みるものであり、それに基づき、ビジュアル・ツールをシート化した教材と、指導理論・指導方法を一体とした指導書の開発を目指している。具体的には、創作文の着想段階におけるシンキングマップ、構想段階におけるストーリーマップや登場人物などの設定マップを活用し、読解と表現の双方から、創作文の仕組みを理解し、誰もが主体性に表現を楽しむことができるライティング・ワークショップ形式の学習プログラムを開発、その指導実践のための指導書を編纂し、広く初等・中等の実践界に寄与することを目的とする。また、附属小学校・附属中学校をはじめとする校内研究、および公立学校の現職研修の機会を通じて、実際の授業作りにも参画し、検討会を通じて改良を重ね、学習者の主体性を保障する指導法や評価方法を含み、広く教育現場に貢献することを目指している。 以上の内、今年度は、(1)創作文(特に物語)自体の構造的分析と理解(2)ストーリーマップを初めとする個々のビジュアル・ツールの特性の分析と把握を終え、マップやシート、カードの開発、さらに附属小学・中学教諭とともにライティング・ワークショップ形式の学習プログラムを開発する段階まで進んでいる。したがって、「おおむね順調に進展している」と評価するものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の計画は以下の通りである。1,創作文のための系統的なビジュアル・ツールを開発し、発達段階に応じた学習のためのマップ、シート、カードとして具現化していく。2,開発したシート、マップ、カードを活用したライティング・ワークショップ形式の単元案を、附属高松小学校・附属坂出中学校の教諭とともに共同で構想する。3,附属高松小学校・附属高松中学校において創作文の研究授業を行う。また、公立小学校として、栗熊小学校においても研究授業を実施する。4,ICレコーダーおよびデジタルビデオカメラを用いて録音・録画し、トランスクリプトに基づき分析する。その学習者反応の分析および表現物の分析を基に改良を重ね、創作文指導の学習プログラムを開発する。5,教師向けの指導理論書を編纂、刊行し、公立校における現職研修の機会をとらえた指導助言、および現職教員研修のための指導法講座の実施、子ども向けの創作ワークショップの開設等を行い、普及に努めるとともに、評価法を含めた実践検証を深める。6,以上の研究成果を、単元案やワークシート集、CD-ROMを含めた指導書の形で公刊し、広く公開する。7,附属小学校・附属中学校をはじめ、公立学校における校内研究、および現職研修や講習会等の機会を通じて、実際の授業作りにも参画し、検討会を通じてさらに改良を重ね、学習者の主体性を保障する指導法や評価方法を含む形で公開・発信を続け、広く教育現場に貢献する。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、国立国会図書館等において内外における創作指導関係文献を収集し、先行研究を整理する。また、欧米におけるマッピング等のビジュアル・ツール関係文献を収集し、分析することによって、原理面・方法面の考察を深化させる。 次いで、附属校・公立校において、ビジュアル・ツールの活用による創作文のパイロット授業および検討会を実施し、ICレコーダおよびデジタルビデオカメラを用いて録音・録画する。録画・録音したものをもとに、資料整理の協力者に依頼し、トランスクリプト化し、分析する。 開発した学習方法を、学習の手引き・ワークシート集として、印刷・冊子化し、関係学校・教育委員会等に広く発送する。
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