研究課題/領域番号 |
23531207
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
吉村 直道 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (90452698)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 数学教育学 / 協調的な学力 / 討議活動 / 数学・数学学習の認識 |
研究概要 |
個人的で個別に評価されるものとして捉える学力観から,社会的で集団の中で発揮されるものを評価する協調的な学力観に基づいた一つの学習モデルを構築し実践することが,H23年度の実施計画であった. 12名の中学2年生に参加してもらい,夏休みの間に話し合いを中心とした4回の学習会を実際に行い,参加者の数学や数学学習についての変容調査を行った.事前調査,事後調査ともに,「数学」及び「数学学習」に対してそのイメージを求め,その結果については第41回数学教育論文発表会にて研究発表した. 数学や数学学習と聞いて,発展的で面白いと感じる一方で努力や先生と自分が重要ということが連想され,どちらかと言えば数学の楽しさを実感しながらも個別的な学習をイメージする学習者たちであったが,このような学習活動を経験することで,仲間が重要であり,その仲間からひらめきや論理そして考え方を重要視する捉えが見えてきた.このような取り組みによって,数学学習で発揮される学力が,従来のような個人的・個別的な学力ではなく,他者の中で自己の数学的な能力を発揮できると同時に,他者の数学的な能力を引き出し受容・協調できる学力へとシフトさせることが期待される. また,数学のイメージについて,「仲間が重要」という感覚とどのような言葉どうしが相関をもつのか調べたところ,事前調査では,自由や活動的という言葉と相関が高く,仲間との実際の活動からのイメージが高い.事後の調査においては,具体的な活動からは離れて,その効果や質的な側面を意識するようになり,仲間の中で論理や発展性を意識できるようになっていた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,中学生を対象とした4回の学習会を,実際に行うことができ,その活動を通して参加者の意識変容を調査し,学会にてその成果を報告した.いずれも計画通りの作業であり,概ね順調と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
前年度は,同じ学校,同じ学年からの子どもたちの中での調査であり,参加した子どもたち同士は親しい間柄であった. 次年度においては,広く地域の子どもたちに学習会の参加を公募し,初めて出会う子どもたちの中での協同性についても研究していくとともに,これまでに構想した話し合いを中心とした学習過程がこのような初対面の学習者でも効果的な学習を引き起こすことができるか,また,初対面の学習者に対して協働的な学習を構想する留意点等について今年度は整理したい.
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次年度の研究費の使用計画 |
多様な相互作用を生み出しながら子どもたちの学習は進んでいく.その活動を,効果的に記録,蓄積し,多様な観点・解釈をもって分析していくことが,本研究では重要である.そのため,記録機器,記録媒体,データ集積媒体,データ編集機器(パソコンを含む)は随時更新しながら取りそろえて行きたい. また,学習者の発話記録(スクリプト)を資料として分析するのが本研究の手法であり,前年度キーワードアソシエーション分析ソフトは準備させてもらったが,より妥当な分析をするため,場合によっては,別のデータマインド分析ソフトを用意して双方向でそれらの分析に取り組みたい.
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