研究課題/領域番号 |
23531209
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
藤田 昌子 愛媛大学, 教育学部, 講師 (40413611)
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研究分担者 |
中山 節子 千葉大学, 教育学部, 准教授 (50396264)
大竹 美登利 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (40073564)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 格差社会 / 自立支援 / 家庭科 / カリキュラム / 高等学校 |
研究概要 |
本研究は,貧困・格差社会に生きる高校生の自立支援をめざした,高等学校家庭科における家庭科カリキュラムの開発を目的としている。平成23年度の主な研究成果は以下の通りである。 1.山形・東京・千葉・神奈川・兵庫の公立・私立高等学校5校1~3年生622名を対象に、生活と労働に関する質問紙調査を実施し,高校生の生活と労働の実態を把握した。厳しい家庭の経済状況が影響し,生活費や学費の一部を稼ぐために厳しい労働市場に強制的に押し出された高校生の実態が明らかになった。そして,貧困は,現在の生活だけでなく,将来の生活に対しても影響し,就職や進学費用,就職後の生活費,結婚や子育て,介護に至るまで経済的不安を感じ,将来の展望がもてない状況であった。 2.1の調査から明らかになった課題を整理し,家庭科カリキュラムを開発した。そして,高等学校で授業実践を行い,その教育的効果を分析した。その結果,(1) 生徒は体験的な学習を通して自分の将来を客観的に把握することができた。(2)生徒は社会保障制度を理解し,雇用形態の相違によって格差が生まれ,利用できるセーフティネットが違うことを理解できた。(3)生徒はやりきれなさ・怒りを表出しそれを共有し,労働者への不当な扱いの改善を求めるなど何かを変えようとする意識の芽生えを確認できた。今後は「生きづらい」社会の現状に失望させるのではなく,希望をもたせ,社会的排除を生み出す社会のしくみを協働で変えていこうとする視点や将来の問題解決につながるような内容や指導法の工夫を継続的に検討し,カリキュラムの内容を精査していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに,高校生の生活と労働に関する質問紙調査を分析し,実態把握を終えている。カリキュラムの開発もおおむね順調に進んでおり,一部のカリキュラムは授業実践により教育的効果も把握済みである。
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今後の研究の推進方策 |
(1)勉強会の開催等により,専門的知識や最新の動向など情報を得る。(2)開発したカリキュラムの教育効果を測定し,再検討する(これまでは生徒の反応や記述を中心に教育効果を測定してきたが,今年度は教師の立場からも捉える)。(3)研究成果の発表し,意見交換を行う(IFHE(国際家政学会),日本家庭科教育学会等)(4)研究成果を広く社会に発信するために,開発したカリキュラムを実践ワーク集として出版する。
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次年度の研究費の使用計画 |
・最新の関連文献・資料等の収集・研究分担者,研究協力者らとの定期的な会議を行うための旅費,研究成果を国内外の学会で発表するための旅費・収集した文献や資料の整理,授業分析のためのデータ入力,インタビューのテープ起こしなどに対する謝金・専門的知識や最新の動向などの情報を得るための勉強会の講師料・収集した資料のコピー費,資料の送付などの通信費など
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