研究実績の概要 |
本研究においては、単元的展開によるさまざまな学習指導法を開拓してきた国語教師・大村はまの読書生活指導に焦点をあてて、情報活用能力の育成とも深く関わる「読書の方法や技術の習得」をねらった学習指導が、中学校1年間及び3年間という枠組みのなかで、どのように行われたのか、また、そこに見られる学習指導の原理と方法(〈基本〉〈練習〉〈応用〉の段階をふんだ指導)がいつ頃から見られるようになったかという点を実証的に究明し考察を加えることを目的とする。 当時の大村の学習指導をうかがう資料としては、大村の講演記録や実践記録等が収録された『大村はま国語教室前16巻』(筑摩書房)に加えて、鳴門教育大学附属図書館に所蔵されている当時の学習者の「国語学習記録」(約2,000冊)等があげられる。これらをもとに大村実践の解明を試みた。考察対象となる中学校3年間持ち上がりの年度は、1957~1959年度、1960~1962年度、1966~1968年度、1969~1971年度である。 このうち、1957~1959年度、1960~1962年度は、教科書教材を経験単元の向きに扱った時代であり、すでに〈基本〉〈練習〉〈応用〉の段階をふんだ指導を見てとることができた。さらに、1966~1968年度、1969~1971年度は、読書指導の指導事項を解明するために、それまでに行った指導もふまえて毎月2、3時間程度の取り立て学習(帯単元「読書」)が新たに実践された時代であった。この内容は中学校3年間を見通した読書生活指導の「計画案」につながったとみることができる。
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