研究課題/領域番号 |
23531212
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
降矢 美彌子 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 教授 (50132535)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / ハンガリー / 人間教育 / 音楽教育 / 学際性 / 芸術教育 |
研究概要 |
豊かな人間性や創造的な考え方の育成を目的におくハンガリーのピアノ教科書『ピアノの夢―創造的なピアノ学習』の理念と指導法について研究し、人間教育としての音楽教育の在り方を探求した。具体的には、平成23年8~9月に降矢がハンガリーに赴き、ピアニストでありピアノ教育者であるアーブラハーン・マリアンとともに『ピアノの夢』の著者アパジ・マーリアによるピアノ指導実践の様子を観察・記録した。10月にはアーブラハーンを招聘し、16日東京において「人間教育としてのピアノ教育」と題してパネルディスカッションを開催した。パネルディスカッションでは、アーブラハーンと降矢によるハンガリーのピアノ教育と『ピアノの夢』についての講演を、ハンガリーで撮影した映像を交えて行い、研究協力者の加藤富美子、宮本賢二朗、小山英恵、粕谷雪子、粕谷正一が、人間教育の視点からそれぞれ教育・研究活動について発表を行った。10月18日広島大学、20日京都、21日大阪にてアーブラハーンによるリサイタルと講演を行い、22日には日本音楽教育学会第42回大会において、降矢、アーブラハーン、宮本、小山が共同企画にて発表を行った。平成24年2月11日には、研究協議会「人間教育としての音楽教育」を開催し、東京、千葉、金沢、福島、仙台の教員も参加して、人間教育の視点から日本の教育現場の実態について発表した。以上の研究から、ハンガリーでは音楽を教えることを通して、自立した大人になるための人間教育を行っていること、自然や詩、絵画や科学等と音楽に共通する根っ子である構造原理を発見するという、学際的なアプローチによってピアノ教育が行われていることが分かった。音楽教育の効果研究からも、音楽教育は子どもの発達を多面的に促進するものであることが分かった。人間教育としての音楽教育の理念は日本の教育全般に関しても大変示唆的であり、その重要性は極めて大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成23年度は、ハンガリーのピアニストでありピアノ教育の第一人者であるアーブラハーン・マリアンを招聘し、豊かな人間性や創造的な考え方の育成を目的とするハンガリーのピアノ教科書『ピアノの夢―創造的なピアノ学習』とその指導法について東京・広島・奈良等で講演を行い、またハンガリー・ドイツ語圏の人間性の育成に重点を置く音楽教育研究の成果についても東京・奈良で発表し、総合的に「人間教育としての音楽教育」の在り方に迫ることができた。学習者と教師の信頼関係を築くこと、そして、学習の始めから、音楽と自然・美術・科学・文学・数学などの音楽以外の様々な分野と関連させた学際的なアプローチを行うことが、学習者の豊かな人間性の育成につながることが明らかになった。また、2月の研究協議会から、日本の小・中・高・大学それぞれの現場の教員が、人間教育としての視点を持った音楽教育が必要であると考えていることが分かり、その重要性が改めて認識された。 平成24年度は、ハンガリーの注目すべき音楽教育学者パヨル・マールタを招聘し、東京・広島・仙台・福島で講演やワークショップを行う予定である。パヨルも来日について快諾しており、招聘に向けての準備・打ち合わせのため研究代表者がハンガリーに赴く時期や、招聘の時期、講演やワークショップの開催日程についてもある程度の目処がついており、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
ハンガリーの音楽教育学者であるパヨル・マールタを招聘し、東京・広島・仙台・福島等で講演やワークショップを行い、 人間教育として行われているハンガリーの音楽教育の実際について広く日本の教育者、音楽教育学者らとともに学び、人間教育としての音楽教育の視点を広めたい。平成24年9月に研究代表者がハンガリーに赴き、パヨル招聘の準備・打ち合わせや、音楽教育についての協議会を行う。10月に開催される日本音楽教育学会第43回大会では、パヨルによるワークショップ、及びパヨルと研究協力者らによる共同企画を行う。さらに、日本における「人間教育としての音楽教育」の在り方を具体的に探求するため、研究協力者らとともに独自の研究協議会を開催する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年9月に研究代表者がハンガリーに赴き、パヨル・マールタ招聘のための準備・打ち合わせ、人間教育としての音楽教育に関する研究協議会を行うための渡航費用・宿泊費・ハンガリー国内における旅費。10月のパヨル・マールタの渡航費用と東京・広島・仙台・福島等における講演・ワークショップに対する謝礼と国内旅費・宿泊費、東京で開催される日本音楽教育学会第43回大会参加費、それらに通訳として同行する研究代表者の国内旅費。平成25年2月(予定)に東京で開催予定の研究協議会に出席する研究協力者らの旅費等。 以上のように、研究費を使用する予定である。
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