研究課題/領域番号 |
23531212
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研究機関 | 帝京平成大学 |
研究代表者 |
降矢 美彌子 帝京平成大学, 現代ライフ学部, 教授 (50132535)
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キーワード | ハンガリーの音楽教育 / 人間教育 / わらべうた / 即興 / 創造性の育成 |
研究概要 |
平成24年度は、ハンガリーの音楽教育の理念と指導法の研究のため、10月にハンガリーからペーチ大学教育学部元副学部長であるパヨル・マールタ氏を招聘し、2種の講演及びワークショップを行った。これに先立って、9月に研究代表者の降矢がハンガリーに赴き、パヨル氏招聘のための打ち合わせ及び研究協議を行った。 パヨル氏は、東京音楽大学(日本音楽教育学会第43回大会共同企画VI)、実践女子学園中学校高等学校、宮城教育大学、福島にて、講演「民族音楽からクラシック音楽へ」と、ハンガリーのわらべうたワークショップを行った。また、聖和学園短期大学においてハンガリーのわらべうたワークショップを行った。福島では、コダーイの理念から最近の脳科学の成果までを取り上げたもう1種の講演「音楽教育による人間性の育成」を行った。これらの講演及びワークショップは、広く日本の教育者に影響を与えた。 日本音楽教育学会第43回大会においては、共同企画IX「人間教育としての音楽教育II―教材と指導法を考えあう―」として、パネルディスカッション(企画・コーディネイター:降矢)を行い、小学校から大学、特別支援の現場でそれぞれ優れた教育実践を行う教員が、優れた教材と指導法によって、子どもたちの人間性が豊かに育つという実践報告を行った。 以上の講演とワークショップ、日本における実践に共通する視点は、伝統的な教材の重要性、創造性の育成、総合化、といえよう。さらに、多様で即興性を持ち、子ども同士で学び合い発展させることのできるような指導によって、子どもたちの豊かな感性を育み、広い視野を持ち学問や芸術で人生を豊かに生きることのできる人間へと成長すると考えられる。これらは今日の日本の教育全般にとって大変示唆的であり、重要な視点である。以上の研究により得られた知見を、帝京平成大学紀要第24巻第1号に論文としてまとめ、成果を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、豊かな人間性の育成を目的とするハンガリー及びドイツ語圏の音楽教育の研究を行い、人間教育としての音楽教育の在り方を探り、日本の学校教育におけるモデルを提唱することである。平成23年度は、アパジ・マーリア著『ピアノの夢―創造的なピアノ学習』の理念と指導法の研究を行い、音楽と自然・美術・科学・文学・数学などの様々な分野とを関連させた学際的なアプローチによってピアノ教育を行うことが、子どもの豊かな人間性の育成につながることが明らかになった。また、音楽教育の効果研究から、音楽教育は子どもの発達を多面的に促進するものであることが分かった。 平成24年度は、パヨル・マールタによる講演とハンガリーのわらべうたのワークショップ、そして日本の小学校から大学、特別支援の教員による実践報告を行い、子どもたちの豊かな人間性を育てる人間教育としての音楽教育は、優れた教材と指導法によって可能であることが確かになった。 以上の研究成果から、人間教育としての音楽教育のあり方は、ある程度その理論と方法論の形が見えてきており、研究は当初の計画以上に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、9月に研究代表者がハンガリーに赴き、アパジ・マーリア、パヨル・マールタと研究協議を行う。また、アパジ・マーリアによって書かれた、ハンガリーの即興のカリキュラムの翻訳と分析を行い、人間教育としてのピアノ教育について、その理念と指導法をさらに詳しく追究する。 これまでの研究のまとめとして、日本において人間教育としての音楽教育の実践を行っている研究協力者と、さらなる研究協議会を開催し、新しい音楽教育の理論と方法論、実践モデルの構築を目指す。それらの成果を日本音楽教育学会で口頭発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年9月に研究代表者がハンガリーに赴き、アパジ・マーリア、パヨル・マールタと研究協議を行うための渡航費用、宿泊費、ハンガリー国内における旅費。 国内で開催予定の研究協議会の開催費用と、協議会に出席する研究協力者らの旅費。 10月の日本音楽教育学会第44回大会の参加費。 以上のように研究費を使用する予定である。
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