研究課題/領域番号 |
23531213
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
有働 玲子 聖徳大学, 児童学部, 教授 (50232880)
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キーワード | 絵本 / 国語教育 / 挿絵 / 読解指導 / 読者 / 読み聞かせ |
研究概要 |
小学校の国語教材において、挿絵が絵本となったものが用いられている教材を考察している。平成23年度に、①レオ・レオニ『スイミー』光村出版・小学校2年生、学校図書・小学校2年生を論文にすることができた。そのことを受けて平成25年度は他の国語教材である②小林豊『世界一美しい僕の村』東京書籍・小学校4年生を中心として考察することにした。 本教材の考察の中心は作家インタビューを中心とし、それが実現できた。その結果、多くの知見を得ることができた。その事は本研究の多くの疑問を解明することになった。つまり、本研究の手順である原点絵本との比較、教科書本文との比較、挿絵の配分状況に絞り、要約などの事柄は、指導に際しての教材研究に含まれ、そのことが作家としての思いを実現することに通じるのであった。今後は教科書教材の該当部分、絵本の絵の削除された本文の指導など国語教育の指導との関連に焦点化して継続研究を行う。 成果の一部は、学会誌に掲載が決まり、平成26年5・6月号『解釈』・国語教育特集・において「絵本を出典とした教材の一考察 -『世界一美しいぼくの村』(小林豊)を用いて-」としてまとめた。 その成果の一例としては、国語教育の指導の複眼性に着目する必要があるとの示唆を得た。本研究の当初の目標に沿って報告書をまとめるための留意点として有意義なものである。平成26年度は数人の作家インタビューを行い、教材と絵本との関係性を考察したい。さらに成果の一例としての知見、指導の複眼性を追究するために、比較としてフィンランドの指導を視野に入れる。今後は、指導書の指導観点、各絵の読み解きの色彩・タッチ・象徴・構図・視点等をまとめていくと同時に、国語教育の複眼的な指導と・絵本研究の成果から得られた指導の接点的な視座を提案する。絵本を出典とした教科書教材は、まだ多くの課題を含んでいるのである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現行の小学校の教材において、絵本の挿絵が用いられているかどうかということも含めて点検を行い、用いられている場合は教科書教材の全ての複写を行った。さらに、その教材に該当する教科書の指導書の複写をほぼ完了した状況である。当初の予想を超えて膨大な量となっており、作業は遅延している。また、予定していた作家インタビューがやっと一人実施したという状況である。 今後は当初の教材の種類を厳選し、抽出した事例研究を行うようにしていく。全体計画のほぼ山場に関わってきている。
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今後の研究の推進方策 |
作家インタビュー、教科書指導書の要約、教科書教材と比較などの考察を行う。 その他の作家訪問、宮西達也、角野栄子、などの存命な作家に知見を得たい。そのためには、現在までの該当する学習指導書の複写を完全におこない、膨大な物理的な時間の確保が必要である。 今後は解題の形として整えていきながら、各絵柄の読み解きとして色彩・タッチ・象徴・構図・視点等の内容を考慮してそれぞれの特異性を分析していきたい。その結果として国語教育・絵本研究の位置づけを提案する。さらに、このような絵本を出典とする教材の指導について、フィンランドの知見を得ることで指導の視座を得たい。 平成25年度と同様に、絵本研究に関わる巨視的な視点からの各種研究会及び学会等への出張を多く予定している。絵本そのものが児童文化と密接な関係にあるからである。そういった絵本の独自の立場を踏まえて、微視的な国語教科書教材の位置を措定する必要が生じてきていることがわかってきたからである。予算の使用も考察の視座の構築を想定している。 その結果、多くの教科書教材を扱うというよりも、厳選された教科書教材を文化的社会的そして教育的な側面から位置づけ、書誌的考察の中身を有効な考察としていく。厳選した教材を、考察するために狭く深くということを意味する。 さらに絵本作家にインタビューを行う。さらに比較として、フィンランドへの現地研修を予定し、課題を明らかにしていくことを行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の海外調査のために、予算の調整を行った。ただし、該当年度の研究成果に支障の無い範囲で調整を行っている。とりわけ、研究の途上において、作家インタビューの際にこのような知見の必要性が生じてきたため、このような計画となった。 研究の方向性を鑑み、海外、特にフィンランドでの知見を得る計画としている。絵本と教材との関連性の国語教育的な扱いに関して、とりわけ、先駆的な取り組みの知見を要する必要が生じている。
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