研究課題/領域番号 |
23531213
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
有働 玲子 聖徳大学, 児童学部, 教授 (50232880)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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キーワード | 絵本 / 国語教育 / 挿絵 / 読解指導 / 読み聞かせ / 読書 / 音声化 / 多読化 |
研究実績の概要 |
小学校の国語教材において、挿絵が絵本となったものが用いられている教材を考察している。平成26年度は絵本と教材を視野に入れた国語教育における指導のありようを考察してまとめる。 指導についての考察の中心は、絵本をどのように用いるかである。方法としては論文化、及び海外視察及び文献調査を行ってきている。その結果として、本研究の指導の方向の手がかかりを得ることになった。つまり、本研究の手順である原点絵本との比較、教科書本文との比較、挿絵読解との関連性などを眼目として探究し、国語教育の指導として、絵本をどのようにして指導に導入するのかを導くことを行っている。 そのことは文献と共に、前年度の作家へのインタビューによる知見との総合をしてみる事が大きな契機となっている。特に、絵本作家自身が教科書の挿絵を教科書会社の依頼によって、原本の絵本にないものを描くことの意味を知ることができた。それはつまり、読みの不得手な読者や学習者を想定する場合は、作家として、自分の表現性を損なうことなく、教科書の挿絵を特別に描くことには躊躇がなく、むしろ内容を焦点化するという姿勢を示すものであった。とりわけ、教科書教材と、絵本の絵の削除された本文の指導など国語教育の指導との関連について、読みの段階に対応した、個別指導を視野に入れた指導のありようについて丁寧に調べる事を行った。 具体的には3つの視座を得ることができた。平成26年5・6月号『解釈』・国語教育特集・において「絵本を出典とした教材の一考察 -『世界一美しいぼくの村』(小林豊)を用いて-」としてまとめた。読書化の方向、音声化の方向、多読化の方向である。 傍証として読書教育に先駆性の高いフィンランドの成果を視野に入れた。視座の一つの読書化の方向にはまだ、探求の余地が残されている。いまだ絵本を出典とした教科書教材の指導には、まだ多くの課題が内包されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
教科書教材の2つの教材の指導について考察をおこなった。さらに、その教材に該当する教科書の作家の一人の取材を通して、作家の思いと教科書作成者の思いの複合的な位置として挿絵があることがわかった。その結果、国語教育の上では個別指導の対応を想定する必要性を痛感した。よって、指導に関しての先駆的な実践を文献により探すことを必要とするようにまとめの方向が変容している。 今後は教材の種類を厳選し、それに対応した、個別指導を視野に入れた指導事例研究を行うようにしていく。全体計画のまとめを行うように収束化をおこなう。
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今後の研究の推進方策 |
作家インタビュー、教科書指導書の要約、教科書教材の比較などの考察を行ってきている。着地点は、あくまでも国語教育の指導のためである。そのためには、現在までの該当する学習指導書の考察をおこない、何よりも物理的な時間の確保が必要である。細かく地道な作業を伴うのである。 今後は解題の形として整えていきながら、論文化した教材の特異性を分析していきたい。その結果として国語教育の指導のなかで絵本の用い方はどのようにおこなうことがより効果的なものであるのかを、試論として提案する。 さらに、このような絵本を出典とする教材の指導について、フィンランドの知見を得たことで国語教育の指導の広さと幅を付与したい。 平成26年度と同様に、絵本研究に関わる巨視的な視点からの各種研究会及び学会等への出張を多く予定している。絵本そのものが児童文化と密接な関係にあるからである。そういった絵本の独自の立場を踏まえることは肝要である。しかしながら、あくまでも本研究は国語教育へのフィードバックが着地点である。絵本論は本研究の主眼ではない。微視的な国語教科書教材の位置を措定する必要が大事である。従来は教材研究として記されているが、その内実を詳細に記したい。予算の使用も考察の構築を想定しながら、必要十分に行うことを予定している。 その過程で、厳選した教科書教材を文化的社会的そして教育的な側面から位置づけ、書誌的考察の中身を国語教育のための寄与するものとして、示してまとめていく。厳選した教材を、考察するためにあくまでも、国語教育の指導としての視点を提示することを行いたい。 読書指導の可能性及び音声指導の可能性もみえてきている。それらを踏まえて、指導の道標を提示して、課題を明らかにしていくことを行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究のまとめの段階にあるため、従来の中でも、手を付けずにおいた箇所を拾っていくことになる。あくまでも、該当年度の研究のまとめに支障の無い範囲で調整を行う。とりわけ、研究のまとめをするために、進行状況から補足をする必要が生じてきたため、まとめに必要なものを執行する必要がある。冊子の印刷費用を最低におさえ、音声化・読書化・多読化の国語教育の指導の方向性を見出すために、予算執行をする必要が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
研究の方向性を鑑み、まとめ段階に必要なものを使用するようにした。絵本と教材との関連性の国語教育的な扱いに関して、読書指導の取り組みをまとめるために、予算を計画的に使うことにする。
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