研究課題/領域番号 |
23531216
|
研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
佐藤 公 武蔵野大学, 教育学部, 准教授 (90323229)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 社会科教育 / 歴史教育 / 対外認識 / 外国史 / 歴史地図 / 時間認識 / 空間認識 |
研究概要 |
本研究は、外国史教育を通じた時間的・空間的認識の統一的把握の実現に必要となる、体系的な対外認識育成のための視点や手順、技能を理論的・実践的に解明する研究である。 平成23年度は、アメリカ歴史教育および地理教育における「歴史地図」の扱いに関する先行研究の収集を進め、時間認識及び空間認識に資する「歴史地図」の用件の明確化と教材性に関する考察を行った。具体的には、実践活動や教科書等教材にみる「歴史地図」の使用とその形態に関する調査として、全米社会科協議会(National Council for the Social Studies)年次大会に参加し、あわせて開催される教科書及び学習教材の見本市にて資料収集と調査・分析を行い、以下の二点に関して資料収集及び考察を進めた。1.アメリカでの歴史地図を用いた歴史教育・地理教育の現状について、NCSSにおける各種成果報告を通じて調査した。単に地図上へ歴史事象に関する地理的・歴史的情報を落としこむだけでなく、地理情報システム(GIS)や、iPadなどモバイル情報機器を使用しながら個々の生徒の活動を引き出し、かつ考察を促す学習を組織するか、その試みが数多く紹介されていた。2.学習活動を支える教科書や教材の現状について、見本市に出展した大手教科書・教材会社の担当者を通じて、教材づくりの方向性や入手可能性について調査を行った。現状では、過去の社会で用いられた歴史地図そのものを使用する歴史学習・地理学習の教材自体は少ないが、テーマ史毎にまとめられた一次資料(Primary Source)としての歴史地図を用いた教材や学習キットは数多く作成されていた。また、国会図書館(Library of Congress)アーカイブの整備により、無料かつオンラインでの材料提供も充実しており、生徒が直接歴史資料に触れて考察する学習の重要性自体は強調されていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度には、アメリカに関する資料収集・考察に加えて、日本での教育実践についてこれまでの拙稿、並びに地図作成学および歴史教育学分野における先行研究における検討成果と課題の抽出を行い、時間認識と空間認識を統一的に把握するための史資料選択に関する調査と収集のための準備を進める予定であった。しかし、日本の教育実績並びに研究成果に関する調査に関しては、拙稿での論点と課題の整理・抽出にとどまり、これまでの日本における歴史教育・地理教育実践を広く検討する段階に至ることはできなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、大きく二点挙げられる。一つは、ドイツ歴史教育および地理教育における「歴史地図」の扱いに関する先行研究の収集・調査を進め、時間認識及び空間認識の育成に資する「歴史地図」の用件の明確化と教材性に関する考察を行う。もう一つは、並行して行う日本での「世界史」学習における通史的「歴史地図」活用実践の創造に向けて、過年度の遅れも補足しながら、地図作成学と歴史地図活用要件の関連性および活用可能性について、アメリカ・ドイツ両国の比較対照結果を踏まえた考察検討を行う。 具体的には、平成24年度は以下の3点に関して資料収集及び考察をすすめる。1.ドイツでは、教科書等教材にみる「歴史地図」の調査として、教科書研究施設であるゲオルク・エッカート国際教科書研究所(Georg-Eckert-Institut fuer internationale Schulbuchforschung)及び書籍見本市であるフランクフルトブックフェアー(Frankfurter Buchmesse)にて資料収集と調査・分析を行う。2.アメリカ、ドイツにおける調査・考察成果を踏まえ、歴史認識と空間認識を統一的に扱え、外国史に関する学習として組織しうる「歴史地図」を抽出する。さらに、それらを時代区分及び地域性の観点から選択・排列し、対外認識を外国史全体通して育成するものとして体系的に構築する。3.日本での教育実践について、学校教育特に社会科教育における活用を前提として、学習指導要領や学校段階、単位数、学習者の発達段階など、「歴史地図」を用いた対外認識育成のための歴史教育実践において必要とされる配慮や工夫、調整が必要な事項を整理、考察する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、各種調査旅費および研究資料の購入に関する支出が中心となる。対外認識に関する教育の比較対象となるドイツでの現地調査を実施するため、外国旅費とともに、現地での調査活動がスムースに進展するよう、翻訳および校閲に関する謝金を計上した。あわせて、過年度の達成度及び研究費執行状況も鑑み、国内での資料調査・収集を行う国内旅費も計上する。さらに、収集したし資料の検討も課題となるが、そのために必要な歴史・地理教科書や関連専門書を購入する。
|