本研究は、思春期における造形表現の低迷や停滞の原因を心理学、芸術学、教育学の知見を総合することにより明らかにし、克服のための方法論を探ろうとしたものである。従来の研究では、この時期に物事に対する客観的態度や批判的意識が強まることによって、表現活動に対する自信を喪失することが原因であるとされてきた。しかし、子どもから大人への表現活動の発達プロセスを直線的に捉え、表現活動の内的メカニズムの問題を軽視している点に限界があった。 本研究では、思春期における描画の危機を造形表現の発達に伴う質的変化の視点から捉え、表現活動の内的メカニズムに着目することにより、危機克服の新たな視点と方策を明らかにした。
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