研究課題/領域番号 |
23531222
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
松崎 正治 同志社女子大学, 現代社会学部, 教授 (20219421)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 実践的知識 / 初任期 / 中堅期 / 暗黙知 / 同僚性 |
研究概要 |
教師の初任期は、入職後のおよそ十年間である。思い描いていたものとは異なる現実にショックを受けながらも、試行錯誤しながら無我夢中で実践を行い、次第に自己の実践課題が明確となる時期である。こうした初任期のおよそ十年前後を経て、中堅期に入ってくる。教師になって三年から五年前後で、教師としてのおよその基本的な力量は形成される。その後、優れた教育実践が展開できるようになるかどうかは、初任期から中堅期へと移行する時期にかかっている。 現在、20代の初任期の教師が大量採用され、初任期から中堅期へと移行する彼らを職場で育てていくことがきわめて重要であるが、そのための知見が解明されているとは言い難い。教師教育の観点からは、この時期の研究が切望されている。 そこで本研究は、教師の中堅期における国語科授業に的を絞って、教師生活の転機における実践的知識の成長を分析し、また同僚性を発揮して相互の成長を図る様相を分析して、中堅期の教師が反省的実践家として国語科における実践的知識を形成していく具体相を明らかにする目的で行われている。 研究の初年度である2011年度は、以下の2つの具体的な取り組みをした。(1)文献研究による先行研究と分析枠組みの確認。(2)実践のデータ収集。初任期から中堅期に移行する時期の小学校教師の授業実践を記録すること、教師にインタビューして、教職経験の具体を聞くこと。 これらの結果、以下のような中間的な成果が得られた。(1)初任期教師が、児童に仮想的になってみることで、ベテラン教師の暗黙知を理解することができる。(2)ベテラン教師の実践的知識を初任期教師は試行錯誤しながら我がものとしてなじませていく時期がある。(3)初任期教師は、我がものとした実践的知識をたとえて広げることで、他教科・他学年に拡張していく。(4)教師は、実践的知識を学校文化の中で省察することで身体化していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね順調に進んでいる。 初年度は、(1)文献研究による先行研究と分析枠組みの確認と(2)実践のデータ収集が主な研究計画であった。 (1)に関しては、先行研究の確認や分析枠組みの創設は、ほぼ出来た。 (2)の実践データの収集は、初任期から中堅期にかけての教師1人分は確保できた。授業実践記録、教師へのインタビューデータは、蓄積できている。
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今後の研究の推進方策 |
研究2年目の2012年度は、およそ2つの取り組みを行う。(1)文献研究による分析枠組みの修整 2年目は、1年目のデータと解釈を基礎にしながら、分析枠組みを修整し確固たるものにしていく。(2)データの分析・解釈の深化と補足 1年目に集めた初任期から中堅期へ移行する時期の教師(年齢的には二〇歳代後半)のデータに加えて、さらにもう1人の小学校教師のデータを収集する。こちらは中堅期に入ってベテランの域に達しようとしている四〇歳代の教師を対象とする。 これらを分析し解釈する作業を深化させる。
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次年度の研究費の使用計画 |
直接経費 800,000円、間接経費 240,000円が交付予定額である。直接経費では、(1)研究枠組みを修正したり、教師の実践を理解していくための本やデータ保存していくための機器などの「物品費」を500,000円、(2)学会で情報収集したり、研究成果を発表するために「旅費」を150,000円、(3)インタビューデータなどのテープ起こし代金など「その他」の費目を150,000円、使用する予定である。
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