研究課題/領域番号 |
23531233
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研究機関 | 国立教育政策研究所 |
研究代表者 |
水戸部 修治 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (80431633)
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キーワード | 国際情報交換 ベルリン / 読解力 / 各教科等の学習 / 国語科教育 / 授業改善 / 学習指導要領 / 評価規準 / 読書活動 |
研究概要 |
初年度に引き続き、月1回、「読解力育成のための授業改善モデル」作成のためのワーキンググループを開催し、主に社会科、家庭科、特別活動、生活科、図画工作科について、国立教育政策研究所が作成した「評価規準の設定例」及び「小学校学習指導要領解説」等を基に、「各教科等の学習に機能する読解力」の抽出作業を行った。その際、単に評価規準等から抽出するのみならず、実際の授業を通して、読解力を必要とする授業場面であったかどうかについて、ワーキンググループのメンバーから聞き取りを行い、その精度を高めていった。こうした作業を通して、まず研究の手法を確立することができた。この詳細については、論文「『各教科等の学習に機能する読解力』解明のための手法開発に関する一考察」としてまとめたところである。 また、初年度に入手したドイツ連邦ベルリン市の、理科における読解力向上のための実践事例を翻訳し、実践の分析を行った。 さらに、この資料を手がかりに、ドイツ・ベルリン州における自然科学系教科での読解力向上の取組の実践と、その実向上のための教員研修の在り方について調査するため、ベルリン・ブランデンブルグ州立学校・メディア研究所を訪問し、詳細な聞き取りを行い、関係資料を入手したところである。この訪問等の結果、自然科学系の教科での読解力向上のためには、例えば通常用いられている語彙が、自然科学系の文章中では、自然科学固有の意味を表す言葉として使われている点に注意して読む必要があるなど、固有の留意点があることを明らかにすることができた。また併せて、読解力育成の基盤として、小学校入門期の読書活動推進の手立てなどについても情報を得ることができた。 ベルリン訪問の際、市立図書館の職員からも聞き取りを行った。学校と図書館が連携することで、子どもの読解力を向上させる仕組みがあることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年次の成果を踏まえ、「各教科等の学習に機能する読解力」を抽出するための手法について確立することができた。具体的には、本研究における「各教科等の学習に機能する読解力」の定義を設定した上で、小学校学習指導要領及び学習指導要領の各教科等の解説書、国立教育政策研究所が公表している「評価規準の設定、評価方法等の工夫改善のための参考資料」において例示している「評価規準の設定例」など、誰もがアクセス可能なデータを基に分析できる手法として開発することができた。この手法によって、社会科であれば、「自分自身や自分の生活と関わらせながら読む」「自分にできることは何かを考えながら読む」などといった、各教科等の学習に機能する読解力の具体像を明らかにできることが分かった。 先行研究では、この手法はこれまでは明らかにされてこなかったため、本研究においては、この読解力をどのように開発するかが重要な課題であった。そのため、この手法の開発の意義は極めて大きいと考える。また、授業実践に活用しやすい形で抽出できたことも有意義であると考える。 また本研究においては、初年度に引き続きベルリン・ブランデンブルグ州立学校・メディア研究所を訪問し、最新の研究開発に関する情報を入手することができた。ドイツ連邦において展開中のProlesenとLesecurriculumは、日本の教育課程改善に資するものであると同時に、現在進行形の研究でもある。そのため、継続的に情報交換していくことが極めて重要な意味をもつと考える。初年度の訪問時にははっきりとはまとまっていなかった研究成果が、今年度の訪問ではかなり具体的な形になっており、研究推進上極めて有益な情報を得ることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
第2年次までにおいて開発してきた研究方法は、方法としてはおおむね確立しているが、今後はその方法を用いて、さらに教科等や学年等を広げながら検討を進めていくことが必要である。また、第2年次までの検討は、各教科等の学習に機能する読解力の具体像の抽出の段階までにとどまっている。それらをどう整理し、体系化するかについては、さらなる検討が必要である。 その際の整理の視点としては、抽出した具体像に見られる共通点を基にすること、おおむね小学校低学年・中学年・高学年の発達の段階を明らかにすることなどが考えられる。また、算数や理科といった理数系、音楽や図画工作などの芸術系といった教科等の特徴ごとに整理していくことも考えられるだろう。 今後の研究の具体的な内容としては、さらに対象教科等を広げつつ、抽出した読解力の具体像を、いくつかの共通項でくくっていく作業を進めることとする。また、学年の発達の段階に応じた読解力を明らかにすることも視野に入れていきたい。 さらにその上で、小学校における国語科「読むこと」領域で育むべき資質や能力を明らかにすることにつなげていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
ワーキンググループの開催及び学会での発表と情報収集のため、国内旅費として550千円、第2次ベルリン訪問調査(H25,3実施済み)及び第3次ベルリン訪問調査の経費として、海外旅費900千円、通訳謝金300千円、入手した資料の翻訳者金として250千円、研究のまとめ冊子の作成費として79千円を使用する予定である。
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