研究課題/領域番号 |
23531237
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
山崎 友子 岩手大学, 教育学部, 教授 (00322959)
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研究分担者 |
山崎 憲治 岩手大学, 大学教育総合センター, 教授 (40422068)
HALL James 岩手大学, 教育学部, 准教授 (80361038)
西館 数芽 岩手大学, 工学研究科, 准教授 (90250638)
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キーワード | 災害文化 / 長期スパン / 復旧・復興 / つなみ / 連携授業 / コミュニテイの内発力 |
研究概要 |
(1)地誌および津波防災の授業において、被災シミュレーション学習を実施し、被災した沿岸の中学校において合同授業を実施した。講義・巡検・デイスカッションを通して大学生は災害を疑似体験し、実際に震災を体験した中学生とともに、避難・減災行動や復興への道筋を立てることを実践的に確認した。(2)また、岩手県三陸沿岸という津波にしばしば襲来される地域の中学校の教育活動に焦点を当て、被災を地域の弱点として克服する過程で被災を「生かされた体験」として災害文化として生かし続けようとする方向の芽生えを捉えることができた。その記録を、中学生の津波体験作文集としてとりまとめた。 (3)このことから、災害が一時的・現象的事象としてではなく、脅威・警戒⇒衝撃⇒復旧・復興という長期スパンが把握でき、「復興」とは、新たなコミュニテイの内発力の生成であることも実証的に示すことができた。(4)学校教育における実験授業として、地域住民と学校教育をつなぐ英語科の授業を、紙芝居「つなみ」を用いて中学校で、地域の復興の柱として期待される地域の高等学校においては、地域の特色の中で漁業に焦点を当てた社会科と英語科の協働授業を実施し、高校生の学習意欲に関して、有意な向上を見ることができ、高大連携授業のモデルを示した。(5)また、国際学会(桜美林大学主催)において海外の研究者とも交流を図ることができ、沿岸部のき合同巡検により、さらに災害についての知見を深めた。 連携研究者(山崎憲治)は、(1)(3)および(4)の社会科授業を担当し、成果を(5)の国際学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)災害文化形成と変容について:昭和三陸大津波と80年後の平成において大津波を体験した人やその家族への聞き取りを行い、国際学会(桜美林大学主催)において2件の発表を行い、海外の研究者から注目された。災害を風化させないことが減災につながることや、被災により新たな内発的な力が個人を超えて地域に生まれることを示し、発表内容は今後米国出版社から出版の予定である。2)宮古市田老の調査と実験的授業の実施をとおして、宮古市立田老第一中学校の教育活動を追跡し、地域の学校が地域の災害文化の形成に大きな役割を果たしていることを津波体験作文集「いのち」(岩手大学地域防災研究センター出版)の編集により明らかにした。 3)実験授業用の教材作成と実験授業:岩手県宮古市田老にある宮古市立田老第一中学校と岩手県立宮古北高校において、「復興」「防災」をテーマとした授業を立案し、実施した。地域の語り部による紙芝居を用いた英語の授業、地域の特色である漁業に焦点をあて、地域の理解を深めることを目指した社会科と英語の連携授業、津波防災のための大学と中学校の合同授業にあたり、独自の教材を準備し実施した。次年度以降も継続してほしいとの要望が実施校から寄せられている。 4)桜美林大学主催の国際学会 "The 2011 Japanese Tsunami: Disaster, Response, and Recovery"において2件発表し、その後海外の研究者と合同巡検等を行い、次年度のシンポジウム開催の基盤づくりとなった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)災害を長期スパンで捉えるフレームの中で、復旧・復興のステージを対象として、学校教育を地域住民・産業との関わりに注目して捉え、その教育活動の復旧・復興に果たす役割と長期的な災害文化の形成にどのように関わっているかを実践的に研究する。(2)学校教育における「教科」の中での復興教育のモデルを開発する。(3)災害文化形成の要素として、学校教育以外の要素(例、神社等)も抽出して、歴史的な形成過程を研究する。(4)津波災害の実際と減災に向けたソフト創り(災害文化の継承と醸成、学校教育における復興のための教材開発)をテーマとしたシンポジウムを開催する。(5)これまでの研究成果をまとめる。 *連携研究者(山崎憲治)は、学校教育と地域住民・産業の関わりの中で特に漁業を、学校教育以外の要素として神社の調査を中心に担当し、災害文化形成過程の研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
1)沿岸部被災地調査旅費等 2)被災地の学校における教育活動の調査・実験授業旅費、謝金等 3)シンポジウム開催のための旅費、謝金等 4)報告書、学会発表のための印刷費・参加費等 繰越金は、年度末に予定していた調査のための経費が予定より小額で済んだために生じた。この繰越金は次年度の使用計画2)の項目で使用する予定である。
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