研究課題/領域番号 |
23531238
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
岡田 毅 東北大学, 国際文化研究科, 教授 (30185441)
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研究分担者 |
坂本 泰伸 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (60350328)
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キーワード | 英語コーパス / データベース / 科学論文 / e-learning / 情報共有 / 属性付与 |
研究概要 |
海外に発信すべきコンテンツを備えた日本人研究者にとっての有益な英語教材を開発し、学習者としての研究者にとって、自らの英語運用レベルや、到達すべきレベルを客観的に把握し、システムユーザーでもある教授者との双方向性を持った情報共有とを通して、より効率的な教材作成を支援するためのシステム開発を推進した。 ユーザー自身による英文データの収集や解析全般を実現する機能をシステムに実装し、それを一方向性のみのe-learning教材としてではなく、対面式の講義や授業の中核となる双方向性を伴ったシステムとして位置付け研究開発を行った。収集した一次データを最大限に活用し、ユーザー(学習者・科学論文執筆者)による定義可能な属性付与を実現するデータベーステーブルの基本設計を完成した。これにより、一方のユーザーとしての教授者側からは、強調を置きたい英語表現個所や構文に対する独自の属性付与を柔軟に保証する事が出来ると同時に、もう一方のユーザーである科学論文執筆能力向上を目指す学習者としての日本人研究者自身も、自らの着目点や疑問点等に関する属性をデータに付与する事が容易になり、双方向性の通信を実現するインターフェイスのもと、より効率的な学習支援を支える教材システムのプロトタイプ(CHAPEL: Corpus Handling and Analysis Package for Electronic Learning)の開発に成功し、実証実験を行った。実証実験後のアンケート調査等を数量的に分析し、次年度の研究推進の指針を得るためのフィードバックとしてそれを位置付けた。 今年度のプロトタイプは、TOEFL-ITPの英文データを大量に用いたが、次年度では科学技術系の英語ジャーナルからのデータを取り込むことによって、研究目的に則したより具体的な表現や構文の習得と定着を支援するシステムの開発に向かうこととする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
教材開発支援システムの中核となるデータベースのテーブル設計と、実際のデータの入出力に関する基本的な設計を終えた。その後プロトタイプ開発に成功し、実証実験を1月初旬に実施した。この事から、研究目的の達成に向けて、おおむね順調に研究は進展していると自己評価できる。 プロトタイプの実証実験の結果から、双方向性を伴った情報共有によるe-learningシステムの果たす役割が明確に把握された。ただし、今年度に用いた英文の一次データには、著作権・使用許諾の問題から、申請者が責任を持って利用できる範囲と種類の英文資源が利用されており、英語の各種科学技術系ジャーナルからのものは十分に含まれておらず、平成25年度前半には電子ジャーナル等を利用した科学論文典拠のデータ収集を推進しなけらばならない。また、科学論文を執筆する際に、日本人研究者が抱く関心や疑問点を様々なwebサイト等を通して収集し体系化する必要がある。最終年度におけるシステムの公開方法に関しては、著作権等の問題に慎重に対応しなければならず、若干の遅れや規模の縮小が予想される。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度初めには、所属大学図書館で利用できる電子ジャーナルから、大量の一次データの収集を開始する。また、これと並行して科学技術系論文執筆に不可欠な英語語彙能力育成のための教材を開発し、年度後半にはweb上に公開する。平成24年度に完成したプロトタイプであるCHAPELを中心に、ユーザーによるデータ取り込みとその解析、および独自定義の属性付与の階層性や属性そのもののきめ細かさに対する考察を加える。これによって、学術分野別の使用域特性が抽出できれば、英語コーパス研究の分野に対する大きな貢献となるので、分析の結果等を学会等で発表する。 日本人科学研究者が個人のWebサイトやblogで公開している、英文論文執筆に関わる情報や、共有のためのヒント集のようなものを数多く閲覧し、英語教員の視線からとともに、理系の研究者たちが英文構造や表現に対して切実に抱く基本的で素朴な疑問や躓きを可能な限り抽出して、教材システムのコンテンツ充実に努める必要がある。 これと並行して、多く出版されている科学英文論文執筆のハンドブックの類いを収集し整理し、その中の有益な部分と、かえって日本人理系科学者にとっては誤解や混乱を招いたりするような記述や内容を精査したうえで、本研究上のコンテンツ向上に資する予定である。 CHAPELを中心としたe-learningシステムのあり方についての研究発表を9月に英国応用言語学会大会で行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度からの繰り越し金を含めて、国内外での学会での研究発表および研究資料収集のための旅費を適切に使用する。また耐久性に優れたサーバーマシン、外部記憶装置、無停電電源装置等の備品を整備する。データ収集や教材の基礎システム作成には大学院生の研究補助者を採用し、謝金を適切に執行していく計画である。
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