本年度は研究最終年度となり、これまで内容の検討を重ねてきた、学校における家庭科教育および地域教育を含めた住教育の実態把握を目的としたアンケート調査の実施に至った。調査は全国の県庁所在地の全中学校を対象として郵送による配布を行い、非常勤講師を含む各校2名までの家庭科担当教員からの回答および返送を求めた。調査内容は、まず家庭科全般の授業実態(時間数、内容領域の配分、使用教材、生徒の学習活動、教員自身の状況)を始めとして、住生活領域についての具体的内容、授業形態などについてである。 さらに、住教育ガイドラインの概要を示した上で、広義の住教育で扱われる内容に対して、中学生段階で身につけたい事項はどのようなものかを尋ね、住教育により期待される指導の効果と指導上の課題についても回答を求めた。また、中学校段階での住生活文化、環境問題、まちづくり、防災などに対する指導の可能性と実践内容について、自由記述も含めて具体的に答えてもらった。 調査内容が複雑かつ膨大であり、加えて調査期間が短かかったために回収率は低く、1割台であった。ただし、全国規模の調査であったため、回収数も少ないとはいえ200通を上回った。回収率の地域差自体に住教育に対する日常的な取組の有無、地域性が現れたともいえ、今後の住教育の展開に対する示唆が得られたといえる。また、本調査は家庭科教員に対する住教育関連の情報提供的な意味も含めており、さらに回答者とのネットワーク構築の礎を築く契機ともいえる取組であった点が、大きな意義といえよう。熱心な回答者からは、今後の教材開発に向けた協力の意思表示とともに、これまでの授業実践の教材提供もあり、今後、教材開発の研究成果を形にするにあたり、大きな前進があったと考える。なお、未だ研究途上ではあるが、この3年間の研究蓄積を報告書の形でまとめた。学会発表、教材提案は今後順次行う予定である。
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