本研究は,研究目的を「日本と韓国の教育現場に横たわる歴史認識問題に対して,日韓の研究者・教育実践者が協働で,臨床的アプローチと「持続可能な開発のための教育」(以下,ESD)を基軸として,日韓相互理解のための歴史教育の教材を開発すること」と設定し,次の手順で研究を進めてきた。【研究方法①】日本の新学習指導要領と教育課程,歴史教科書の分析・検討・考察と韓国の教育課程と歴史教科書の分析・検討・考察を通じ,日韓の相互理解をめざすESDを重視した歴史教育の内容と方法を探る。【研究方法②】日韓の子どもたちの身の回りにあるESDに関するモニュメント等と子どもたちの歴史意識・歴史認識の関係を検討し教材開発の可能性を探る。【研究方法③】研究方法①と②で導出された知見に基づき授業を構想し,授業実践・検証を行う。研究の結果,次の知見を得ることができた。【研究結果①】日韓の中学校歴史教科書における近世から近代の日韓関係史に関する叙述を比較検討し,今後の日韓双方の歴史教育実践の充実に向けての指針を導出できた。【研究結果②】日韓の中学校歴史教科書における江華島事件に関する叙述をESDの視座から比較検討し,今後の日本における日韓相互理解のための教育の充実のための視点を導出できた。【研究結果③】教材開発・授業実践の結果,生徒が日韓関係史をESDの視点からとらえ直すことが,日韓相互理解のために有効であることが確認できた。今後の研究課題(研究の可能性)として,ESDの視点を一層重視した「未来を選択する」視点を重視したカリキュラム・教材開発の可能性が確認された。
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