研究課題/領域番号 |
23531247
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石上 靖芳 静岡大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50402227)
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研究分担者 |
益川 弘如 静岡大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50367661)
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キーワード | 授業研究 / 実践的知識 / 事後検討会 / 単元デザイン |
研究概要 |
本研究の目的は、1. 複数の教師が単元デザイン作成過程に参加し、個々の教師が保有する実践的知識を基盤に対話を通して作成される単元デザインの知識創造プロセスを具体的に解明すること。2. 授業研究実施後に行われる事後検討会において教師が何を学んでいるかを解明することである。平成23年度の研究成果においては、1.を中心に分析を行った結果、社会科単元に卓越した熟練教師ほど、過去の経験から獲得された教授方略及び学習内容と教授方略が融合した複合的な実践的知識を豊かに保有していることを明らかにしてきた。本年度においては、2.を中心に分析と検討を行った。小学校の校内研修を対象に事後検討会のグループ研修の発話のデータを検討した。その結果、(1)「I:教科・教材に関する内容」「II:教授方略に関する内容」「III:子どもに関する内容」のカテゴリー及び11の下位カテゴリーに分類が可能となった。(2)全グループの発話の内容は「III:子どもに関する内容」(42.9%)、「II:教授方略に関する内容」(35.7%)、「I:教科・教材に関する内容」(5.3%)の順に多いことが明らかとなった。さらに、協議では子どもの事実をもとに多様な解釈、教師のとった手立ての妥当性、代案提示による授業の再デザインをするなどして協議内容を深めていることが示された。(3)各グループの発話数の量においては、有意な偏りが見られたが、若手、中堅、ベテラン教師の発話量には有意な差はみられなく、年齢の差に関係なく発言していることなどを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集に関しては、昨年度から継続して県内のT小学校を対象に実施し、その分析結果をまとめ、学会等で発表し公表した。関連する研究成果は以下の通りである。(学会発表)・「校内授業研究の活性化要因の抽出とそれが教師の力量形成に及ぼす影響-A市小中学校教師へのアンケート調査の結果から-」日本教育実践学会第15回研究大会(兵庫教育大学:於 神戸),2012.11.3,研究大会論文集 pp.38-39 ,石上靖芳,小笠原 忠幸、・「事前・事後検討会における教師の授業力量向上に関する検討-小学校学年研修の協働的な省察場面に焦点をあてて-」日本教育実践学会第15回研究大会(兵庫教育大学:於 神戸),2012.11.3,研究大会論文集 pp.40-41,小笠原 忠幸,石上靖芳・「グループを主体とした校内授業研究事後検討会の効果に関する検討- F市立T小学校の校内研修を対象として -」日本教育実践学会第15回研究大会(兵庫教育大学:於 神戸),2012.11.3,研究大会論文集 pp.42-43,前島 純司,黒柳 幸夫,石上靖芳 (論文)・「校内授業研究が教師の力量形成に及ぼす影響 -活性化要因の構造的分析と指標の抽出-」学校教育研究,第28巻,pp.38-51 以上のことから研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、さらに研究を推進するうえで以下の点を明らかにしていきたいと考える。 (1)教師は授業研究を通して何を学び、実践化を図っているのかを、事前検討、実践、事後検討会等の一連のサイクルを包括的に捉えることで明らかにしていく必要がある。 (2)熟練教師がもつ実践的知識がどのように生涯にわたって形成されていくのかを事例を通して解明していく必要がある。 (3)以上を踏まえ、効果的な研修プログラムの開発を行い、試験的に教育現場で試行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の通り、研究費の使用を計画している。 物品費:収集したデータを分析するためのパソコン、解析するための統計ソフト、関連する専門書、旅費:情報収集及び研究成果発表旅費、謝金:データ整理のための謝金 以上が必要である。
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