研究課題/領域番号 |
23531247
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
石上 靖芳 静岡大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50402227)
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研究分担者 |
益川 弘如 静岡大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50367661)
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キーワード | 授業研究 / 実践的知識 / 事後検討会 / 単元デザイン / 学年部研修 |
研究概要 |
本研究の目的は、1.個々の教師が保有する授業実践に必要な実践的知識を具体的に解明すること。2. 教師が実践的知識を獲得していくための校内研修における教師の学習について明らかにすることである。平成25年度においては、これまでの研究成果を踏まえ、1.においては、ベテラン中学校国語科教師を対象に長期的な参与観察を実施し調査を行った。その結果、「授業観」「授業構想段階」「授業実践段階」の3つのレベルの実践的知識を抽出し整理を行った。「授業観」は国語科の授業実践全体を支える信念である。「授業構想段階」は、教材の配列や単元展開に関する知識で構成されている。教材の配列においては、単元の目標や内容に照らし、有機的な配列がなされ、単元展開においては、副教材やオリジナルの教材が活用され、ガイダンス、先行教材、本教材、発展という段階を意識して構成されている。「授業実践段階」では、学級に応じた対応、生徒への対応、授業展開の工夫に関する知識で構成されている。2.においては、小学校の校内研修の一環として取り組んだ学年部研修を対象に、若手、中堅、ベテラン教師の3人に焦点をあて分析を行った。その結果、自身の授業実践を振り返る省察と協働で取り組む学年部研修における対話が授業改善を図って行く上で重要であることが明らかとなった。さらに省察には、授業実践の方法論に関する技術的省察、授業の目標や学習者の文脈を重視するなどの実践的省察、自身の価値観までを再構成する批判的省察の3段階のレベルがあることが示され、批判的省察を引き起こすには、同僚との対話が重要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の成果をまとめ、論文(査読付学会誌1本)及び学会(6本)にて発表を行った。関連する研究成果は以下の通りである。 (論文)「校内授業研究の活性化要因が若手・中堅・ベテラン教師の力量形成に及ぼす影響-中学校教師への質問紙調査の数量的分析-」教師学研究,第12号,2013.7,pp.1-10 (学会発表)・「校内授業研究事後協議会における教師の学習に関する検討-グループ協議における対話的相互作用の分析から-」日本教育実践学会第16回研究大会(岡山大学:岡山市),2013.11.2,研究大会論文,pp.110-111・「省察力を高めるティーティングポートフォリオの効果の検討―小学校学年部研修に焦点をあてて―」日本教育実践学会第16回研究大会(岡山大学:岡山市),2013.11.2,研究大会論文集 pp.112-113・「ベテラン中学校国語科教師の実践指導力の解明―長期的な参与観察の分析から―」日本教育実践学会第16回研究大会(岡山大学:岡山市),2013.11.2,研究大会論文集 pp.116-117・「国語科教師の授業力量形成に影響を及ぼす効果的研修要因の検討-中学校教師への質問紙調査の検討から-」日本教師学学会第15回年次大会(環太平洋大学:岡山市),2014.3.8,pp.18-19 ・「小学校教師の授業力量形成を促す授業実践記録シートの効果-学年部研修における若手,中堅,ベテラン教師の省察に焦点をあてて-」日本教師学学会第15回年次大会(環太平洋大学:岡山市),2014.3.8,pp.24-25・「国語科教師の単元デザインの構造と授業実践力解明に関する研究-ベテラン中学校教師への長期的参与観察を通して-」日本教師学学会第15回年次大会(環太平洋大学:岡山市),2014.3.8,pp.30-31以上のことから研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、さらに研究を推進するうえで以下の点を明らかにしていきたいと考える。 (1)教師は授業研究を通して何を学び、実践化を図っているのかを、事前検討、実践、事後検討会等の一連のサイクルを包括的に捉え、長期的なスパンのもと明らかにしていく必要がある。 (2)中堅教師や熟練教師がもつ授業実践に関する実践的知識に関して、小学校における国語科を対象に事例を通して解明していく必要がある。 (3)以上を踏まえ、効果的な研修プログラムの在り方に関して検討すること。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度から3年間にわたり、個々の教師が保有する授業実践に必要な実践的知識を具体的に解明することと教師が実践的知識を獲得していくための校内研修における教師の学習について明らかにする主題に迫るために研究に取り組み、その成果を平成23年度には、論文4本、学会発表3本、平成24年度には、論文1本、学会発表3本、平成25年度には、論文1本、学会発表6本と発表してきた。さらにこれまでの成果を踏まえ、教師の実践的知識がどのような契機や機会で形成されるのか、また若手、中堅、ベテラン教師の職歴区分によってどう認識が違うのかを明らかにしたく研究の継続を依頼した。 本年度を本研究の最終年とするため、研究成果発表のための学会参加旅費(大阪、長岡、岐阜、東京等)、研究成果報告書、報告書郵送費、ノートパソコン、消耗品等の物品等を購入する予定である。
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