研究課題/領域番号 |
23531248
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
新山王 政和 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (10242893)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 音楽科授業研究 / 音楽鑑賞活動 / 音楽表現活動 / 言語活動 / 学習指導要領 / 音楽の諸要素 / 音楽構成要素 / 授業プラン |
研究概要 |
演奏上の違いを聴き取れるから演奏表現が幅広く豊かになり、表現の技術や知識があるからこそ演奏上の変化を聴き取ることができる。"聴く"ことをコアに据え、表現と鑑賞が一体化した活動によって、音の塊や音の羅列に音楽的意味や価値を自分なりに付加しながら感情や情動を呼び起こす仕組みや仕掛けを思考判断し、言語活動によって共有・共通理解に高める授業プランを小中学校教員と模索している。1.研究初年度に検討した学習サイクル:(1)DVDやCD等で模範演奏(プロの演奏等)を視聴する→(2)児童生徒も曲の一部分を取り出して練習する→(3)練習した部分を録音し模範演奏と聴き比べる→(4)何が違うか考えながら練習を深める→(5)練習の成果を録音して再び模範演奏と聴き比べ全員で何が足りないかを話し合う→(4)話し合いの結果を基にしてさらに練習計画を練りブラッシュアップを図る。2.今後検討するポイント:(1)子ども達自身の練習の深まりに対する「録音して聴いてみたら」等の"録音⇔検証"を促す声かけのタイミングや方法、かける言葉。(2)自分達の録音とプロの録音を聴き比べてその違いを感じ取れない子ども達へのはたらきかけの方法や声かけの言葉。(3)技術指導のタイミングや方法。(4)より演奏表現を深めるための教師のはたらきかけ。以上4点について実践を通して検証する。3.新たな課題:(1)子ども達の試行錯誤によって何がどこまでできるのか?そして教師の働きかけはどのタイミングで、どのように行うのが効果的なのか?これらを再検証する。(2)低学年の場合「範唱に近づけるために,どうしたらいいか」という問題意識が子ども達の中に生まれにくい。問題解決の課題との出会わせの道具としてICレコーダーの活用法を再検討する。以上2点を次年度以降の検討課題とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実践協力者への研究概要(目的と意義、めざしている成果)の説明は終わり、計画に沿った実践を試みてもらうことができた。その結果、研究初年度においては、音楽科授業における鑑賞の位置づけを次のように措定するに至った。 「演奏や聴くという行為そのものが既に創造的な活動であることから、鑑賞=自らの音楽的・表現的要求と照合して聴くことを通じて、児童・生徒が次の4点を身に付けることを目標とする。1.聴き方の型やパターンを知りそれを身に付ける力。2.音楽構成要素を聴く力、分析する力、想像する力。3.作曲者の周到な作戦を推理する力。4.制約の中で工夫された表現を創造する力」 これらの結果は、本学の「大学附属協同研究会報告」へ掲載するとともに、全日本音楽教育研究会全国大会(2011年11月17日、札幌市教育文化会館)および日本音楽教育学会全国大会(2011年10月23日、奈良教育大学)で行い、さらに全日本音楽教育研究会大学部会会誌へ投稿した(受理・印刷中)。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、特に、音楽構成要素に気づかせ、意識させるプロセス、つまり音響現象と音楽の諸要素を結び付けその良さや働きを自覚する再構成を活動の基盤とした場合に考えられる「鑑賞で必要な音楽の諸要素を知覚する力の措定」を最重要課題としてめざしたい。その際に実践協力者へ提案する確認事項は次の4点である。1.他者や自身の演奏を聴いて要素に気付き、感じ取り、それを意識する段階。2.他者の演奏や自身の練習前後の演奏を聴き比べたりして、その変化や良さを自覚する段階。3.要素同士の係わりや組み合わせによって生まれる効果や働きや、音楽の仕組みを考える段階。4.気付き感じ取ったことを演奏へ結び付け、共有・共通理解へ高めて演奏へフィードバックする段階。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初凍結された補助分を大学教育研究費(個人研究費)により確保したため、次年度への繰越が生じている。今後は全ての実践協力者が必要とするICレコーダーを確実に用意することで、よりきめ細やかな授業実践が推進されることを期待する。 さらに繰越金を使用して一般校の教員にも実践協力をはたらきかけてより広範囲に授業実践を試みてもらい、H25度愛知県音楽教育研究会で研究成果を披露することを視野に入れつつ、研究を推進する。
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