研究課題/領域番号 |
23531249
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
森脇 健夫 三重大学, 教育学部, 教授 (20174469)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 同僚性の構築 / 学びの協同化 / 教科の専門性 / 校長のリーダーシップ |
研究概要 |
同僚性の構築による教師の力量形成研究ーライフヒストリー的アプローチを用いてーという研究課題に即して当該年度は次のような研究活動を行った。 1.三重県I市のS中学校における校長および数名の教師のライフヒストリーインタビュー S中学校では「学びの協同化」を校内研究テーマとして設定し授業公開等を行ってきたが、中堅期にあたる教師たちはテーマにどのように取り組み、それはこれまでの自分のライフヒストリーの中でどのような位置を占めるのかを明らかにした。 中学校の教師の場合、教科の専門性を磨く研修を重ねてきているが、学びの協同化が提起する生徒どうしの関係性の構築や学び合いについての知見を必ずしも十分にもっているわけではない。校内研修によって教科を越えて同僚の授業を見合い、学べるということを体験することができたと教師たちが思っていることが明らかになった。また学びの協同化と教科の専門性は必ずしも離反するものではなく、より高い次元で統合されるべきだということを考えていることも明らかになった。 2.タイ、中国において学校参観、授業見学、また教師たちのライフヒストリーインタビューを行い、現在の授業がどのような過程で形成されてきたかをインタビューを通して明らかにした。タイの中学校における社会科の授業においては、地域研究をテーマとしてとりあげていたが、それは教師の経験の中で、地域と学校の関係性の構築がとても重要だということに気付いたからだということであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題について、第1年目にあたる今年度はそのデータをとるということに主眼をおいて行った。その結果、公立中学校における教師たちのライフヒストリーインタビューを在籍教師数のほぼ半数の教師と校長にインタビューできたということは、とても貴重なデータ収集となった。また外国(タイ・中国)における教師のライフヒストリーインタビュー、授業参観も行うことができ、貴重なデータを得ることができた。 今年度予定していた研究活動についてはほぼ達成できたと考えるが、3年間の研究課題からすれば、その達成度は半分くらいだと考えている。つまりそのデータの整理、また新たな研究課題の定立、実行という過程を踏んでいく必要があると考える。 現在、集まったデータを整理しているところである。その整理のもとにいくつかの試論を執筆してきた。ライフヒストリーインタビューによって教師たちがどのような思い、あるいは考えで校内研究テーマである「学びの協同化」に出会ったのかについて理解することができた。外からではわからない自分の思いや自分のライフヒストリーの中での意味づけなどについても知ることができた。こうした貴重なイーミックデータをどのように整理し新たな課題に結び付けられるかが問われるところである。 2年目の2012年度はひきつづきデータの収集、およびデータの整理、分析から新たな問題提起ができるようにがんばりたい。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究の成果を踏まえ、同僚性の構築というところに焦点をあてて、教師の力量形成にどのようにそれがかかわるのか、について引き続きデータを集めたい。今年度も中学校を一つ主要なフィールドとするが、小学校についても研究校を一つ取り上げ、そこでの研究活動について同僚性の構築が教師の力量形成にどのようにかかわるのかについてライフヒストリーのインタビューを通して明らかにしてきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
フィールド調査(授業参観、インタビュー調査)が主になるので、旅費等が主な費用になると考える。また、ビデオカメラ等の調査機器もいくつか物品としてそろえる予定にしている。またインタビューの謝金、インタビュー記録の整理等について賃金アルバイトについても費用をねん出する予定である。
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