研究課題/領域番号 |
23531251
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
永田 成文 三重大学, 教育学部, 教授 (40378279)
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研究分担者 |
田部 俊充 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (20272875)
荒尾 浩子 三重大学, 教育学部, 准教授 (90378282)
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キーワード | 国際交流 / オーストラリア / 地域連携 |
研究概要 |
本研究では,小学校の外国語活動を中心とした教育実践において,異文化コミュニケーション能力の育成とともに持続可能な社会に向けた実践的判断力を育成することを目指す,発達段階に応じた遠隔会議を活用したESD(持続発展教育)教材を開発する。 平成23年度は,低学年の文化領域と第6学年の経済領域に関するESD教材を開発した。このことを踏まえ,平成24年度は,中学年の経済領域である「人に優しいまちづくり」というESD教材を開発した。また,第6学年の環境領域である「地域の自然災害からの防災」というESD教材を開発した。 平成23年度は日本とオーストラリアの小学校との遠隔会議でお互いにテーマが異なっていた。このため遠隔会議では日本のテーマの内容を発信する場に留まっていた。平成24年度は,お互いに伝えたいテーマを設定し,お互いのテーマについても発表する形式を取り入れた。諸外国の取り組みと比較することで意見交流の場となり,児童は日本の持続可能な社会に向けた取り組みの特色をより意識することができた。 各テーマについては日本の小学校の社会科や総合的な学習の時間で児童が学習している内容から設定し,小学校と大学との連携を強化した。具体的には,大学の教員が持続可能な開発の視点から内容を補足するための特別授業やコミュニケーション能力を育成するための発音練習を計画的に取り入れた。オーストラリアとの遠隔会議では,より異文化コミュニケーション能力と持続可能な社会に向けた実践的判断力が育成され,より完成度の高いESD教材に近づくことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度と平成24年度にそれぞれ低学年と中学年のESD教材を開発し,第6学年では,経済領域と環境領域のESD教材を開発した。前者は本研究の目的である発達段階に応じたESD教材の開発に対応し,後者は小学校の外国語活動により望ましい遠隔会議の内容を分析することに対応している。 平成23年度の課題として,三重大学の地域連携校である北立誠小学校と連携体制を強化していくことを挙げていた。平成24年度は,定期的に打ち合わせを行い,遠隔会議後に反省会を行った。小学校の教育活動の中でESDの視点を導入した単元を考えてもらい,補足的に大学教員が特別授業を行うという,小学校と大学が連携してESD教材を作り上げるシステムが構築されつつある。 オーストラリアのクージー小学校にもESDに関わるテーマを発表してもらうように依頼し,より持続可能な社会を意識できるように工夫を加えた。遠隔会議では,お互いに発信したいテーマは異なるが,お互いのテーマについて伝え合うことで,児童はテーマに関する理解を深めることができるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は引き続き,中学年のESD教材の開発,第6学年のESD教材の開発を行っていく。中学年の対象児童は第4学年となる。第3学年時よりも,より地域の持続可能性を意識できる内容をテーマとして選定し,より高度な英語を活用したコミュニケーションを成立させるESD教材を開発していく。第6学年は,低学年・中学年の学習内容を踏まえて,より持続可能な社会の活動を意識することができるようなテーマによるESD教材を開発していく。 小学校の外国語活動を中心とした活動において,異文化コミュニケーション能力の育成と持続可能な社会に向けた実践的判断力を育成できているのかを客観的に分析するために,ESD教材の前後でアンケートを児童にとってきた。このアンケートは遠隔会議を行うことが前提となっているため,より客観的なデータがとれるようなアンケートを開発する必要がある。また,児童の遠隔会議への感想など記述式のデータもそろえていきたい。 平成23年度,24年度ともに児童は遠隔会議でオーストラリアの児童に上手に伝える活動を強く意識していた。持続可能な社会に関わる内容を意識させるために,伝えたい内容と,相手から伝わる内容でどのような理解が深まったのか,意識が高まったのかを省察させる場面を設定したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度までに,三重大学の遠隔授業室においてさらに3本のワイヤレスマイク(合計6本)をそろえるなど,遠隔会議に必要なハード面を充実させることができた。平成25年度は,遠隔会議に必要なソフト面を充実させる。 引き続き国内外で遠隔会議を活用したESD教材開発についての研究発表を行いたい。このため国内外での旅費を確保する。 平成24年度に,遠隔会議において日本から送るデータがクージー小学校で見ることができない事態が発生した。先方の情報担当教員と綿密に連携を図る必要がある。また,平成25年度と平成26年度に遠隔会議を継続的に位置付けていくことを確かめる必要がある。平成25年度以降の遠隔会議の運営方針の確認,オーストラリアのESDの推進状況を把握するために,オーストラリアのクージー小学校において打ち合わせを行い,ESDに関する資料を収集する。 平成24年度からの検討課題であった,地理独特のESD教材としての地図ソフトの活用については,ESD教材にどのように位置付けるのかを検討し,引き続き北立誠小学校に導入できるかを検討していきたい。
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