26年度の研究は,前年度に実施した『プロの調理人に農業生産物を直接出荷する,いわゆる品質にこだわる農業生産者と,そうでない一般的な農業生産者に対して実施した,農産物や農業教育などに関する調査を京都市内の農業従事者を対象に行い、その結果の分析及びその結果を活かした日本版味覚教育の授業プログラムの製作,そしてそのプログラムに則った授業実践とその教育効果の分析・評価を実施した。 その結果、『こだわりの農業生産者』、一般生産者ともに「京野菜」や「地産地消」を意識した生産をしているものの、前者は後者に比べて野菜などの「旬」や「季節性」をとくに大切にした生産を行っていることが明らかとなった。 次にその結果を取り入れて日本版味覚教育プログラムを作成した。小学校中学年を対象とする全7単位時間の構成で、いずれも「総合的な学習の時間」において実践する。第1次は『五感で感じよう』を主題にした内容で、料理は味覚だけでなく視覚、触覚など他の感覚を総動員して味わうものであることを児童に理解させる。以下、第2次が『おいしさを耳で感じよう』、第3次が『直径10cmの和食の世界』、第4次が『「だし」を五感で感じよう』、第5次が『旬の野菜を五感で感じよう』、第6次が『和食を作ろう』の全6次構成であり、和食を主題材としている。 授業はこのうち第2次と3次について、小学校4年生を対象に2クラス分を実施した。その結果、『和食がより好きになった』子ども達および『和食は季節感のある料理』であることを認識する子ども達が、いずれも授業前に比べ統計的に有意に増加した。また児童の食習慣の授業効果への影響も、一部に有意な変容が認められた。 本研究で作成した授業プログラムは、子ども達の和食への意識を改変するのに、十分な教育効果を持つものと結論された。
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